インタビュー

甲状腺のスペシャリストとして自身の体験を患者さんに還元していく

内分泌代謝内科から甲状腺専門病院に

私は香川大学医学部を卒業後、第一内科へ入局しました。その後、関連病院などを経て、香川大学医学部附属病院の内分泌代謝内科で2年勤めました。内分泌代謝内科を専門とする中で、甲状腺についてより深く学びたいと思い、2008年に初めて隈病院の門を叩きました。その後医局人事で一度、香川大学病院へ戻りましたが、2014年に隈病院へ帰ってきました。現在は隈病院の内科医として甲状腺疾患の診療をしています。

学生時代のバセドウ病が甲状腺のスペシャリストを目指すきっかけに

幼いころから喘息持ちだったことと、中学生の頃に甲状腺の病気であるバセドウ病を発症したことが、医師を目指した、さらにいえば甲状腺のスペシャリストを目指したきっかけです。若い頃から病院とは縁の切れない生活を送っていたため、医療はとても身近な存在でした。

そうやって患者として過ごしていく上で、いつか医師になって自らの実体験を患者さんへ還元できればと思うようになりました。医学部へ進学した当初は小児科医になることも考えましたが、研修などの学びを通じて、内分泌代謝内科医の道を志しました。

豊富な症例と経験を得られる病院

私が医師として初めて隈病院に来た日、甲状腺専門病院のレベルの高さに「ちゃんとついていけるだろうか?」と心配しながらも、心はわくわく高鳴っていたことを覚えています。いざ入職してみると、わからないことは質問しやすく、皆さん親切で大変溶け込みやすい環境でした。特に当時の副院長の窪田先生は、診療中であっても私の質問にお答えくださったり、日頃からフィードバックをくださったりと非常にお世話になりました。

当院での勤務を振り返って感じるのは、症例数が豊富であるということです。大学病院で4~6年勤務しても一度も診たことがなかった症例を、ここでは診ることができました。個人的な感想ですが、1年勤務するだけでも甲状腺専門医としての経験値は上がりますし、さまざまな症例を診ることで、甲状腺の専門医として大きく成長できる土壌があると思います。

「言葉づかい」と「精神面のサポート」を心がける

普段から患者さんと接するときに気をつけているのは、「言葉づかい」と「精神面のサポート」です。甲状腺疾患の症状はストレスからの影響がとても大きいので、患者さんを診療するときは細心の注意を払っています。患者さんが医師に対して「冷たかった」「怖くて質問することができなかった」と感じないように、診察中は患者さんを尊重する言葉づかいと、気持ちが少しでも楽になるような対応を心がけています。強く不安やストレスを抱えている患者さんに対しては、臨床心理士の力を借りて、精神面のサポートに努めています。

また、病気にかかることは「コンプレックス」や「デメリット」だと捉えられがちですが、私自身はバセドウ病の発症をきっかけに医療に興味を持ち、医師になる夢を叶えました。ですので、患者さんには、病気によってもたらされるデメリットばかりを見るのではなく、メリットにも目を向けながら、前向きに診療に取り組む大切さをお伝えしています。

さらに当院では、毎月第3土曜日に甲状腺の患者さん同士がコミュニケーションをとれる「隈病院おしゃべり会」を開催しています。病気になったのは自分だけじゃないと気づき、気持ちの面で少しでも楽になっていただければ嬉しいです。

医師・患者さん両方の気持ちが理解できるこの仕事が好き

私はバセドウ病を若い頃に発症しましたが、その後治療を経て妊娠・出産も経験しました。ですので、患者さんの不安や疑問に感じられる点は、私自身も悩み、感じたことです。そのため、普段の診療では患者さんと同じ目線に立って共感することを目指しています。

実体験を患者さんに還元できることは喜びであり、日々のモチベーションにも繋がっています。患者さんから「先生に診てもらってよかった」「話を聞いてもらえてよかった」と言っていただけることは何よりも嬉しく、また頑張ろうという活力にもなります。医師として診察するだけではなく、患者さん側の受け止め方も理解できるこの仕事がとても好きです。

「おたがいさま」助けあい精神がある職場環境

私は2019年の1月に産休から復帰し、現在1歳9か月の子どもを育てながら、お腹のなかには第二子を妊娠しています。ありがたいことに隈病院の内科は時間外業務がほとんどないため、ほぼ毎日定時であがり、子どもを保育園に迎えに行くことができます。

時折、子どもが熱を出してお休みをいただかなくてはならない日も、先生同士でカバーしあうなど、「おたがいさま」の精神が培われている当院は、子どもを持つ医師として大変働きやすい環境だと思います。

隈病院で臨床と研究を続けていきたい

医師としての私の根底にあるものは「臨床(診察)で患者さんを元気にしたい」という思いです。甲状腺疾患の患者さんは多いものの、一般的にはあまり知られていません。突然病気を診断され、不安な気持ちになっている患者さんを、臨床で少しでも勇気づけることができれば本望ですし、これからも変わることのない私の使命です。

また、今後は学会発表などアカデミックな場にも積極的に出ていきたいと考えています。私は日本甲状腺学会・小児甲状腺疾患診療委員会に所属しているので、いつか日本全体の小児の診療体制にも影響を及ぼせるような研究にも挑んでいきたいです。

臨床と研究、これらの夢を叶えていくためには、何よりも家庭と仕事の両立を続けていくことが私にとっての命題です。自分が働いていない姿を想像することができないので、今後もワークスタイルを変えながら、医師という仕事を続けていくでしょう。そして、それは「隈病院であればできる」と信じています。

このインタビューのドクター

内科

内科 医長
久門 真子医師

中学生の頃に経験したバセドウ病がきっかけとなり、甲状腺を専門とする医師になることを決意する。香川大学医学部を卒業後、2002年に同大学の第一内科に入局。内分泌代謝内科を中心に、広く内科診療の経験を積む。その後、甲状腺の診療について学ぶため、2008年に隈病院の内科に入職。その後、一度大学へ戻るが、2014年に再び隈病院へ。入職後は、産休や育休を取得しながら、診療に尽力。自身の病気の経験から、患者さんに寄り添った診療を心がけている。

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