甲状腺の微小癌

甲状腺の微小癌

病気の特徴

大きさが1cm 以下の小さい甲状腺癌を微小癌といいます。甲状腺とは関係がない原因で亡くなった方の病理解剖の研究で、甲状腺には非常に高率で微小癌(ほとんどが乳頭癌)が認められます。超音波検査を用いて検診すると成人女性の3.5%に微小乳頭癌が発見されます。微小癌であっても、手術でリンパ節を取ると、30%以上の方に顕微鏡的なリンパ節転移があります。しかし不思議なことに、リンパ節を取っても取らなくても再発率は変わりません。顕微鏡レベルのリンパ節転移は生命や健康の障害とはほとんどならないようです。

さて、こんなに高頻度で発見される微小乳頭癌の全てに手術が必要でしょうか?リンパ節転移や遠隔転移がない低危険度の微小癌に対して、当院(1993 年〜)および癌研有明病院(1995 年〜)では手術しないで経過観察していますが、これによって、大部分の微小癌はほとんど進行しないこと、もし少し進行してもその時点で手術すればその後に再発した方はいないことが明らかになりました。当院ではすでに千数百名の微小癌を経過観察していますが、10 年間でサイズが3mm 以上増大したのは8%、リンパ節転移が出現したのは3.8%であり、このような患者様はその時点で手術を受け、その後の再発はありません。そのため、最近の日米のガイドラインでも、微小癌はすぐに手術をせず定期的な経過観察でもよいとされるようになりました。

さらに、通常の甲状腺癌とは逆に高齢者の方が進行する可能性がさらに低いことも明らかになりました。微小癌の手術は決して難しいものではありません。それでも、当院のような専門病院で手術を行っても、永続性の重大な合併症が声帯麻痺0.2%、副甲状腺機能低下症1.6%と低率ながら起きてしまいました。

以上のことを総合的に判断して、当院では低危険度の微小癌と診断された患者様には、治療の第一選択として経過観察をお勧めしています。経過観察中に、もし病気が少し進行した場合には、その時点で手術を行えばほぼ手遅れにならないと思われます。ただし、下記の危険性が高い微小癌には手術をお勧めします。

危険性が高い甲状腺微小乳頭癌

  1. 超音波検査やCT 検査などで明らかにリンパ節などに転移がある場合
  2. 癌が声帯を動かす反回神経の近くにある、もしくは、気管に浸潤している可能性のある場合

治療計画

手術を選ばれた方には手術を行い、術後は定期的に観察します。経過観察を選ばれた場合は、最初は半年後、その後は原則的に1 年毎に超音波検査などにより癌の進行状況を観察します。腫瘍が明らかに増大するかリンパ節転移が新たに出現した場合は手術をお勧めします。それ以外は患者様が手術をご希望にならない限り、経過観察を続けます。当院では非常に多くの患者様が、10年以上にわたって経過観察を続けていらっしゃいます。また、上に述べましたように、たとえ少し進行しても、その時点で手術を受けられれば手遅れになった症例はありませんので、ご安心ください。

より詳しい説明は隈病院ホームページの、「隈病院が取り組む新しい甲状腺医療」をご参照ください。

病気について