2021.09.30

バセドウ病とは(症状・原因・治療など) (ばせどうびょうとは(しょうじょう・げんいん・ちりょうなど))

  • バセドウ病
  • 甲状腺の病気
  • 甲状腺の病気の症状
  • 甲状腺ホルモン
  • 目の症状

病気の特徴

甲状腺は、のどぼとけの下に位置する臓器で、新陳代謝を活発にする働きを持つ甲状腺ホルモンを生成します。
バセドウ病は、この甲状腺ホルモンが異常に多くつくられることで、新陳代謝が過剰になる病気です。
症状としては、甲状腺の腫大、頻脈、そして眼球突出の3つが代表的で、動悸や息切れなどが自覚しやすいです。
 
バセドウ病は、年齢にかかわらず発症の可能性がありますが、特に20歳代から40歳代にかけて多くみられ、女性が男性より3~5倍多いと言われています。

なお、バセドウ病という病名は報告したドイツ人医師の名前からつけられています。他にも「バセドー病」「バセドウ氏病」などと表記されることがあります。また、別の報告者の名前から「グレーブス病」と呼ばれることもあり、英語圏では主にこの病名が使われています。

原因

バセドウ病は甲状腺を刺激する自己抗体が産生され、甲状腺ホルモンが過剰産生されることで発症する自己免疫疾患です。この自己抗体をTSH受容体抗体 (TRAb)と呼びますが、産生される原因はよくわかっていません。

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バセドウ病の遺伝について

バセドウ病は、家族や親類の中で複数の発症が認められるケースが多くあります。たとえば、母親がバセドウ病の場合、娘がバセドウ病になる確率は通常の約6〜10倍程度と言われており、健常者と比較すると発症の確率はやや高い傾向にあります。しかし、実際には遺伝的因子だけではなく、環境的因子(感染、ストレスなど)と両方の関与があるのではないかと考えられています。

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症状

バセドウ病の代表的な症状は、甲状腺の腫大、頻脈、眼球突出の3つです。ただし、バセドウ病にかかったからといって、必ずこの3つの症状が全てあらわれるわけではありません。
その他にも、動悸・多汗・体重減少・疲労感・手の震え・息切れなどの甲状腺機能亢進症状と呼ばれる症状も、バセドウ病の特徴の一つです。他の疾患でも見られるような症状なので、バセドウ病とは気が付きにくい場合もありますが、放置しておくと、病状が悪化し、命に係わる状態に至ることもあります(甲状腺クリーゼ)。そのため、気になる時は、我慢せず医師の診察を受けるようにしましょう。

よく見られる症状
1.全身症状
暑がり、疲れやすい、だるい、微熱、体重減少
2.表情、頸(首)
目つきがきつい、眼球突出、甲状腺腫大
3.神経・精神症状
イライラ感、落ち着かない、集中力低下、不眠
4.循環器症状
動悸、頻脈、心房細胞、心不全、むくみ、息切れ
5.消化器症状
食欲亢進、口渇、軟便、排便回数増加
6.皮膚
発汗、脱毛、かゆみ、皮膚が黒くなる
7.筋・骨症状
脱力感、筋力低下、骨粗鬆症、手足のふるえ、周期性四肢麻痺
8.月経
月経不順、無月経、不妊

検査・診断

確定診断や、病状の進行程度をしるためには、以下のような検査が必要です。
 
1.血液検査
採取した血液から、以下の項目を測定します。
 
①甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの測定
バセドウ病では甲状腺ホルモンの数値が高く、甲状腺刺激ホルモンの数値が測定できないくらい低くなります。
 
②TSH受容体抗体 (TRAb)の測定
バセドウ病の方のうち99%の割合で、検査結果が陽性となります。
当院では、TSH受容体抗体の他、甲状腺に対する抗体(抗Tg抗体、抗TPO抗体)も測定します。
 
2.超音波検査
甲状腺の大きさ、甲状腺内の血流等で病気の状態を判断します。また、甲状腺の内部に結節(しこり)がないかどうかを検査します。
 
3.摂取率検査
これは、微量の放射性ヨウ素を内服、あるいはテクネシウムを注射し、甲状腺に何%集まるかを測定する検査です。
バセドウ病の場合、投与した放射性ヨウ素およびテクネシウムの多くが甲状腺に集まります。一方、無痛性甲状腺炎などの甲状腺が破壊される病気では、ほとんど甲状腺に集まりません。
当院では、より確実な診断を行うため、原則として放射性ヨウ素摂取率、あるいはテクネシウム摂取率の検査を行っています。
妊娠中など避けた方が良い場合もありますので、気になるところがある方は、医師に相談してください。

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治療

1.薬物治療
 
バセドウ病の治療は、まず薬を使って甲状腺ホルモンの産生を低下させ、血液中のレベルを正常化させます。このように、甲状腺ホルモン値を下げることにより、甲状腺機能亢進症状を軽減させることが目的です。
 
甲状腺ホルモンの産生を抑える抗甲状腺薬を毎日決められた量を内服していれば、徐々に血中の甲状腺ホルモン値も下がってきます。甲状腺機能亢進症状は内服2週間後くらいから少しずつ良くなりはじめ、通常1〜2か月ほどでかなり改善されます。
 
この間は副作用に注意しましょう。どんな薬もそうですが、抗甲状腺薬にも副作用があります。
まれではありますが、特に深刻な副作用としては、白血球が急激に減って体の抵抗力が弱り感染症にかかることで、40度くらいの高熱や喉の痛みが出ることがあります。放置すると、白血球の量は下がったままで、大変危険な状態になります。抗甲状腺薬の内服を開始後、38度以上の高熱が出た場合,ただちに抗甲状腺薬を中止し,必ず病院を受診してください。
その他、じんましんなどの薬疹や肝障害のリスクがありますが、いずれも早期に適切な処置をすれば改善する見込みが高いものです。そのため、定期的な通院で、副作用が出ていないか確認することが重要です。
 
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内服により、血中の甲状腺ホルモンが正常レベルに維持できて、症状が落ち着けば、運動制限も特になく、健康な時と同じような生活を過ごせるようになります。
そうすると、もう完治したように思えて自己判断で薬の内服を中止したり、不規則な内服になったりしがちです。
適切に休薬の時期が判断されていないと、最初の状態に逆戻りしてしまうことも少なくありません。
 
薬物治療は、定期的に検査を行いながら抗甲状腺薬の内服量を調節していきます。
治療を続けるうちに、甲状腺機能が安定すれば、薬の量や、通院の間隔を減らしていくことができます。その期間は、およそ2年ほどが目安です。
特に、内服を止める時期の判断は難しく、早すぎる場合には、上記のように症状が逆戻りしてしまいます。そのため、担当医とよく相談し、決してご自身の判断だけで薬の量を変更したり内服をやめたりしないことが大事です。
 
2.放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)
 
2年間内服しても抗甲状腺薬の服用を止めることが出来ない場合は、そのまま継続して内服していくか、あるいは別の治療法を検討することになります。
 
その一つが、放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)です。この治療は外来で受けることができ、効果も確実で安価な治療です。毎日内服する抗甲状腺薬とは違い、外来診療の予約日に1回放射性ヨウ素のカプセルを内服するだけの治療方法です。甲状腺の大きさによっては複数回の内服が必要になる事があります。
内服すると放射性ヨウ素が甲状腺に集まり、甲状腺の組織を破壊して、甲状腺が小さくなります。その結果、甲状腺ホルモンを産生する力が弱まります。
これにより、多くの方は甲状腺機能低下症になりますので、その場合は甲状腺ホルモンを甲状腺ホルモン薬で補わなければいけません。ただ、甲状腺機能低下症の治療に使う甲状腺ホルモン薬には、副作用の心配はありません。また、検査も年に2回でよくなりますので、抗甲状腺薬の治療よりはるかに楽になる事が多いです。
 
3.手術
 
甲状腺が大きい場合や薬が効かない場合、腫瘍が合併している場合などには手術が行われることもあります。

「バセドウ病」と診断されたら

バセドウ病は治療によって症状を抑えることができる疾患ですが、治療をご自身の判断で中止したり、あるいは強いストレスが加わることで、症状が悪化したり、場合によっては甲状腺クリーゼと呼ばれる、生命の危機を伴う重篤な病態となるケースもあります。
症状が改善されてきたからと言って投薬や通院を怠らないこと、またストレスを避けた規則正しい生活をすることが大切です。
 
また、タバコは甲状腺にも極めて害が多い嗜好品で、バセドウ病が治りにくく、眼球突出などの症状も起こりやすくなります。喫煙されている方については、すぐに禁煙を始めることを強く推奨します。
 
さらに、バセドウ病は、心房細動や膠原病などの疾患を合併する可能性があります。年齢などによっては心不全や骨粗しょう症など重大な疾患を引き起こすリスクも高まるので、注意が必要です。
 
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妊娠・出産について

妊娠・出産時にも、バセドウ病がリスクとなる可能性があります。
バセドウ病の妊婦さんが、未治療や治療不十分によって、甲状腺機能亢進状態にある場合、流産や早産の確率が健常妊婦の場合よりも若干高くなります。そのため、妊娠中は抗甲状腺薬で甲状腺機能を正常化させておくことが重要であり、通常よりも頻繁に、通院し検査をうける必要があります。
さらに、バセドウ病の原因となる自己抗体(TRAb)は胎盤を通じて胎児に移行するので、胎児が甲状腺機能亢進症となる可能性もあります。お母さんがきちんと抗甲状腺薬を内服し、定期的に検査を受けることが必要です。治療には、産婦人科との連携が必須となりますので、担当の医師に必ず相談するようにしてください。
 
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