甲状腺機能低下症の原因による分類

原発性甲状腺機能低下症

よくみられる原発性甲状腺機能低下症の原因は慢性甲状腺炎(橋本病)、医学的治療後、ヨウ素過剰、先天性、ヨウ素欠乏です。ただしヨウ素欠乏による甲状腺機能低下症は外国にはよく見られるのですが、日本では見られないと言って良いでしょう。

甲状腺機能低下症は永続性である場合と一過性(一時的)である場合があります。治療を行う場合はそのどちらであるかをよく見極める必要があります。無痛性甲状腺炎や。亜急性甲状腺炎後の甲状腺機能低下症の多くは一過性です。

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先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)

生まれた時から甲状腺機能が低下している赤ちゃんがいます。先天性甲状腺機能低下症と呼ばれています。クレチン症とも呼ばれます。

さまざまな原因がありますが、日本では3000から4000人に1人の確率で生まれてきます。こういった赤ちゃんに対しても早期に先天性甲状腺機能低下症を発見して、甲状腺ホルモンの内服療法を行えば、正常に成長できることが分かっています。

日本では生まれてきた赤ちゃんの血液を濾紙に吸わせて、そのTSHを測定することで新生児の甲状腺機能低下症スクリーニングが行われていますので、異常があればすぐに連絡があります。日本での先天性甲状腺機能低下症の原因は無甲状腺症(甲状腺がない)、甲状腺低形成(甲状腺が小さい)、異所性甲状腺(甲状腺が正常の位置にない)、甲状腺ホルモン合成障害(甲状腺がうまくホルモンを作れない)というものです。ヨウ素欠乏地域に見られる地方性クレチン症(日本では見られません)とは異なります。

新生児のスクリーニングで発見された先天性甲状腺機能低下症の赤ちゃんには甲状腺ホルモン剤を欠かさず内服させる必要があります。定期的に血液検査を受けて甲状腺ホルモン剤の量を調節します。ある程度成長してから、甲状腺機能低下症の原因検査を行うことがあります。原因にもよりますが、一生涯、甲状腺ホルモン剤の内服が必要になると考えておいた方がよいでしょう。出生後すぐに甲状腺ホルモン剤を開始すれば成長や発達は健康な人と変わりありません。妊娠や授乳に影響することもありません。一般的には運動や食事など制限事項はありません。

ヨウ素過剰摂取

ヨウ素をたくさん摂りすぎると甲状腺機能低下症を起こしたり、甲状腺機能亢進症を起こしたりすることが知られています。日本ではヨウ素によって甲状腺機能亢進症が起こることはほとんどありません。ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料なので、たくさん摂るとホルモンが増加するように思われるかもしれませんが、実際には過剰なヨウ素は甲状腺の働きを弱めてしまいます。

ヨウ素過剰摂取

甲状腺に異常のない方がヨウ素を大量に摂取しても、甲状腺機能低下症になることはあまりありませんが、元々甲状腺になんらかの異常を持っている方がヨウ素を摂りすぎると、甲状腺機能低下症を起こすことがあります。甲状腺に異常がある方とは慢性甲状腺炎の患者様、放射性ヨウ素治療や甲状腺の手術療法をうけて甲状腺が小さくなっている患者様です。

ヨウ素の過剰摂取としてよくみられるのが根昆布療法を行っている患者様やイソジンうがい薬®でうがいを毎日行っている患者様です。

メルカゾール®やチウラジール®(プロパジール®)などの抗甲状腺薬を内服してバセドウ病を治療している患者様が、ヨウ素を大量に摂取すると甲状腺機能がさらに変化することがありますが、普段の食事でヨウ素を制限する必要はありません。

医学的治療によって生じる甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は医療行為によっても生じます。バセドウ病や甲状腺腫瘍の治療後がその代表です。
バセドウ病に対して放射性ヨウ素治療を行うと、約半数以上の患者様が甲状腺機能低下症になります。ただし、甲状腺機能低下症になっても甲状腺ホルモン剤を内服すれば甲状腺機能を正常に維持できますので心配はいりません。

甲状腺全摘術(甲状腺を全部とる手術)を施行した場合、全ての患者様が永続的な甲状腺機能低下症となります。

甲状腺疾患以外でも、頭や首に生じた悪性腫瘍やリンパ腫に対して放射線外照射療法を行うと甲状腺機能低下症になることがあります。その発症時期は数か月〜数十年後と長期にわたります。

抗甲状腺薬を過剰に内服すると甲状腺機能低下症になります。バセドウ病の治療中に薬の減量のタイミングが遅れた時や、無痛性甲状腺炎がバセドウ病と間違えられて抗甲状腺薬が投与された場合に起こります。その他の薬剤では躁うつ病に用いられるリチウムによっても甲状腺機能低下症が起こることがあります。しかしこれらの薬剤による甲状腺機能低下症の多くは一過性で投薬の中止により改善します。

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