手術の合併症

全身麻酔の危険性

現在の全身麻酔は非常に安全性が高いので、持病などのない方では重大な合併症が起こる可能性はほとんどありません。しかし、循環器、呼吸器をはじめ持病のある方では、麻酔や手術による影響で持病の悪化や、重篤な合併症を起こすことがあります。
全身麻酔下の手術が予定された患者様には麻酔科医師の診察を受けていただきます。事前に全身麻酔に関するパンフレットをお渡ししておりますのでご一読ください。

出血の危険性

頚部には大きな血管あり、甲状腺自体も血流に富んだ臓器です。甲状腺の通常の手術であればたいてい出血量は約100ml以下であり、ほとんど輸血を必要としないため、輸血の準備は行いません。

ただし、腫瘍が血管と癒着している症例や、大きなバセドウ病の手術で、出血量が多くなる可能性があります。 また、術後に縫合した創の中で出血を起こし(たいていは24時間以内)、出血を止めるための再手術が必要になることが極まれにあります。

創部感染

外科手術ではある一定の確率で創部感染を起こす危険があります。特にリンパ節郭清など広範な手術の場合その危険が高くなります。免疫力の低下した状態(高齢者、免疫を低下させるお薬を服用している方、糖尿病患者など)ではその確率が通常より高くなります。

嗄声[させい]

嗄声とは声がかれることをいいます。甲状腺のすぐ後側には、反回神経という声帯をコントロールしている神経が左右1本ずつ走っています。この神経を損傷し、神経麻痺が起こると、術後に嗄声が起こります。反回神経はデリケートな神経で、通常の手術操作で確実に温存していても麻痺が起こることがあります。たいていは一時的なものであり、3〜6か月以内に回復することがほとんどです。

しかし、腫瘍が神経に浸潤している場合には、神経を切断せざるをえないこともあります。当院ではそういった場合には手術中に神経吻合を行うことにより、少しでも嗄声の改善を図るようにしています。約半年ぐらいで嗄声をある程度は回復させることが可能です。電話での通話が困難になるくらいの嗄声が起こることは大変まれです。

この反回神経麻痺が両側に起こった場合には、声帯が閉じてしまい、呼吸困難を起こすことがあります。この場合には、気管切開を行って気道を確保する必要があります。

高い声、強い声が出せない

喉仏の外には輪状甲状筋という筋肉があり、これが収縮すると声帯の緊張が高まり、高い声、強い声がでます。この指令を伝えるのが上喉頭神経外枝です。
甲状腺の手術の際に、上喉頭神経外枝が傷つくと、高い声、強い声が出せなくなることがあります。

詳しくは、「隈病院が取り組む新しい甲状腺医療」の「声の障害を避けるための神経モニタリング」を参照してください。

副甲状腺機能低下症

甲状腺の背側には、副甲状腺という米粒大の大きさの臓器が左右2つずつあり、血中のカルシウムをコントロールしています。手術時には、なるべく血流を良い状態に保ち、副甲状腺を残しておくように努力しますが、その場所によっては甲状腺にくっついてきて一緒にとれてしまったり、温存しても血流が悪くなるなどして、副甲状腺機能低下状態になることがあります。

その時には、頚部の筋肉に、とれてしまった副甲状腺の組織を埋め込むことによって、その機能を回復させるように尽力しています。副甲状腺機能低下状態になると、血中のカルシウムの濃度が低下し、手足、顔面のしびれなどの症状を来たします。術後、一次的にカルシウムが低下する時には、カルシウムや腸管からカルシウムの吸収をよくするビタミンDを内服してもらい、カルシウムを正常な状態に保ちます。次第に副甲状腺の機能が回復してきた時点で、これらの内服薬は止めることができますが、機能回復が十分でない場合には内服を継続する必要があります。

リンパ漏

頚部の血管付近には太いリンパ管(胸管)があり、広範囲のリンパ節の切除を行う手術では、術後にリンパ液の漏れを起こすことがあります。ドレーンからの排液が増えることで分かります。たいていは食事制限などでおさまってきますが、再手術をして止めることが必要になる場合もあります。

頚部の違和感

甲状腺の手術によって、頚部の癒着が起こり、手術後に頚部のつっぱり感や圧迫感、飲み込む時の不快感を感じる方がいらっしゃいます。術後のリハビリを行うことによってある程度の改善は得られますが、個人差が非常に大きいもののようです。 手術直後は、前頚部の皮膚の感覚がなくなったように感じるかと思いますが、これは徐々に気にならなくなっていきます。

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