甲状腺の検査

甲状腺の検査

甲状腺の検査にはさまざまな種類があります。

検査される患者様へのお知らせ

医師から絶食・絶飲の指示が出ていない方は、検査前でもお食事をとっていただいてもかまいません。検査結果に影響がでる方のみ医師から指示いたします。

ホルモン検査

甲状腺ホルモンについて(T4、T3、FT4、FT3

甲状腺ホルモンは、甲状腺の濾胞細胞と呼ばれる場所でヨウ素を原料に作られます。そして、濾胞細胞では、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)と呼ばれる2種類の甲状腺ホルモンが作られます。T4は貯蔵型ホルモン、T3は活動型ホルモンとも呼ばれ、働きはT3のほうがT4より強いと言われています。濾胞細胞からはT4のほうがT3より多く血液中に分泌され、肝臓や腎臓においてT4はT3へと変換されます。また、血液中のT4とT3は、そのほとんどが甲状腺ホルモン結合蛋白と呼ばれるタンパク質と結合した状態で血液中を流れています。そして、そのごく一部が遊離型ホルモン(FT4、FT3)として、活性型甲状腺ホルモンとなり全身で作用します。

実際の診療では、甲状腺ホルモンの測定は、ほとんどの場合血液中のFT4とFT3の測定で行われ、当院でもFT4とFT3にて甲状腺機能の評価を行っております。また当院では、これらの甲状腺ホルモンについては約1時間程度で測定が可能です。

甲状腺ホルモンの調節機構

甲状腺ホルモンは、脳の下垂体と呼ばれる場所から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)とお互いに分泌の調節を行っています。脳下垂体から分泌されたTSHが甲状腺細胞膜のTSH受容体(TSHレセプター)に結合すると、その刺激により甲状腺ホルモン(T4、T3)の合成と分泌が行われます。血液中に分泌されたT4、T3は、今度は逆に下垂体に作用しTSHの分泌を抑制するように働きます(ネガティブフィードバック)。そして、これらお互いの刺激と抑制作用によりホルモン分泌の調整がなされ、私たちの血液中のホルモン濃度は一定に保たれています。

バセドウ病では、甲状腺ホルモンが高いため、脳下垂体でのTSHの分泌が抑制されています(ほとんど感度以下)。また、慢性甲状腺炎(橋本病)では、甲状腺ホルモンが低い場合には脳下垂体でのTSH分泌が抑制されないため、TSHは高値となります。これらの甲状腺ホルモンとTSHの関係は、言わばシーソーのような関係であり、一方が高くなればもう一方は低くなるといった関係にあります。

主な甲状腺疾患における甲状腺ホルモン値(FT4、FT3)と甲状腺刺激ホルモン値(TSH)との関係
tshft3ft4
 

 

甲状腺の自己抗体

自己抗体とは

甲状腺疾患の中で、バセドウ病、慢性甲状腺炎(橋本病)は自己免疫性甲状腺疾患とも呼ばれ、自己(主に甲状腺)に対する抗体の産生が病気の原因だと言われています。

私たちの体内には、自己(自分の臓器や細胞など)と非自己(他臓器や細菌・ウイルスなど)を区別し、体内に侵入してきた異物を非自己として排除するという免疫機能が備わっています。そして、これら異物に対し、攻撃役として働くのが抗体と言われるものです。自己免疫疾患とは、自己を誤って非自己として捉え、これらを排除しようとしてしまう免疫異常で、自己に対する抗体が過剰に産生され、様々な病状を呈します。関節リウマチなどの各種の膠原病がこの自己免疫疾患にあたります。

自己免疫性甲状腺疾患では、甲状腺内にあるタンパク質やホルモン受容体に対して、様々な自己抗体が産生されることが病気の原因になっていると言われています。そして、これらの抗体の有無を測定することで、疾患の診断が行われています。

甲状腺自己抗体の検査

  • 抗サイログロブリン抗体(TgAb)
    甲状腺濾胞細胞内に貯蔵されている糖蛋白(サイログロブリン)に対する自己抗体。
    慢性甲状腺炎(橋本病)で高頻度に陽性となるが、バセドウ病でも陽性となることがあります。
  • 抗TPO抗体(TPOAb)
    甲状腺組織から抽出されたマイクロゾーム分画に対する自己抗体であり、後にペルオキシダーゼであることが判明しました。サイロイドテストと同様、慢性甲状腺炎(橋本病)、バセドウ病で陽性となります。
  • TSH受容体抗体(TRAb、TBII)
    TSHレセプター抗体は、TSH受容体に対する自己抗体で、バセドウ病では90%以上が陽性となります。この抗体の結合により、TSH受容体が刺激され甲状腺ホルモンが増加します。ラジオレセプターアッセイ法で測定したものをTBII、バイオアッセイ法で測定した刺激抗体をTSAbと言います。

 

TSHレセプター抗体

抗体値の測定は、バセドウ病の診断、治療効果や再発の指標として有用です。甲状腺機能低下症の患者様の中には、稀にこの抗体が陽性となる場合もありますが、これは、甲状腺刺激阻害抗体(TSBAb)がTRAbとして測定されるためです。

サイログロブリン Thyroglobulin

サイログロブリンとは

  • 血中に分泌される甲状腺ホルモン(T4=サイロキシン)の直前の物質のことです。
  • 甲状腺組織の中で合成され大量に貯蔵されています。
  • 正常の状態では血液中にはわずかにしか出てきません。
    甲状腺に病気が出現した時に血液のサイログロブリン値が高い値を示します。
  • その値は血液中の濃度で表現されます(正常値46ng/ml以下)。

サイログロブリンは甲状腺の血液検査でしばしば測定されるもので、Tgと記されています。
血中サイログロブリン値は、

  • 甲状腺の腫瘍がサイログロブリンを産生する時
  • 甲状腺を刺激する物質で甲状腺が刺激された時
  • 甲状腺の炎症で甲状腺組織が破壊された時

に高い値を示します。甲状腺乳頭癌、甲状腺濾胞癌などの甲状腺の腫瘍マーカーとして使用されることがありますが、良性の甲状腺腫瘍、やバセドウ病、慢性甲状腺炎などでも値が高くなり、必ずしもがんの存在を示すものではありません。

甲状腺乳頭癌や甲状腺濾胞癌になった方は、甲状腺全摘術の後に腫瘍マーカーとしてサイログロブリンの測定を行います。もし低下していた血中サイログロブリン値が高くなった時は、頸部のリンパ節の再発、遠隔臓器への転移、たとえば肺転移や骨転移などが考えられます。

サイログロブリンの値が高いだけでは、甲状腺癌の確定診断はできません。血液のサイログロブリン値では甲状腺腫瘍の良性悪性の鑑別は不可能です。良性悪性の鑑別には超音波検査、細胞診などを行います。

サイログロブリンの特殊な使い方

・大きく腫れた頚部のリンパ節が、甲状腺癌由来であるのかを診断します。注射針でそのリンパ節の組織を採取し、食塩水で稀釈してサイログロブリンの値を測定します。サイログロブリン値が高い時は甲状腺癌由来と診断できます。

・甲状腺から遠く離れた組織(たとえば肋骨や腰の骨)が腫大した時、甲状腺癌由来のものかどうかを診断します。その組織の中にサイログロブリンが存在するかをプレパラートの上で染色し、顕微鏡で観察して、サイログロブリンが陽性であれば甲状腺癌の転移と診断されます。

超音波検査

超音波は母体内の赤ちゃんの観察に用いられるほど安全な検査です。

甲状腺でも同様で、当院では外来での様々な甲状腺疾患のスクリーニング検査の主力のひとつになっています。甲状腺の大きさ、しこりの存在の有無とその性状、リンパ節の腫大の有無などが分かります。
超音波を用いるのでレントゲンと異なり被爆せず、ゼリーを塗った探触子を体表で滑らすだけなので、痛み等を伴うこともありません。

初診の患者様のほとんどにこの超音波検査を行っています。超音波だけでしこりの良悪性の確定診断を行うことは困難ですが、ある程度の質的診断(良悪性の鑑別)が可能です。また、触知できない小さい病変や、しこりの大きさの変化を比較するのにも有用です。検査時間は甲状腺で約10分、乳腺で15分程度です。

当院では、超音波装置は現在8台あり、超音波学会の指導医がいます。
超音波検査で結節の良悪性の鑑別が可能ですが、これだけでは確定診断はできないので、当院では細胞診を併用しています。また甲状腺の体積測定もできます。甲状腺の炎症の診断もある程度可能です。

頸部レントゲン撮影

通常は、正面と側面の2枚撮影します。石灰化を伴うしこりの診断や、気管の変位、狭窄の有無などを診ます。検査に当たって痛みは伴いませんが、レントゲン検査はわずかに被爆するので、妊娠中の方はご相談ください。

ヨウ素摂取率検査

甲状腺は、ヨウ素を原料として甲状腺ホルモンを合成していますが、この検査は甲状腺がヨウ素を取り込む性質を利用して行う検査です。甲状腺へのヨウ素の取り込み具合により甲状腺の活動度が判定でき、主に甲状腺機能亢進症(バセドウ病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎)の鑑別に有用です。24時間後の摂取率では、バセドウ病では高値となり、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎では3%以下に著減します。(当院正常値10〜40%)

検査の実施前には1週間のヨウ素制限が必要です。放射線を用いるため、妊婦や授乳中の女性は施行できませんので注意が必要です。

ヨウ素制限についてくわしくはこちら

シンチグラフィー診断

甲状腺ホルモンを産生するしこりの診断や副甲状腺腫瘍の部位の診断、甲状腺癌の再発の診断などに用いられます。放射性同位元素(ヨウ素、タリウムなど)を用いる検査なので、妊娠中の方はご相談ください。基本的には予約が必要な検査で、比較的高価な検査なので、詳細は病院スタッフにおたずねください。

CT撮影

甲状腺癌と周囲臓器(気管、食道など)との関係、リンパ節転移の有無、遠隔転移(肺転移など)の有無、再発チェックなどに用いられます。レントゲンを用いますので、妊娠中の方はご相談ください。また、時に造影剤を用いた検査を行うことがありますが、この時は医師立会いの下に行います。以前に造影剤を用いた検査で、アレルギー反応(呼吸困難、発疹など)を起こしたことがある方はお伝えください。

穿刺吸引[せんしきゅういん]細胞診

甲状腺に細い針を刺して直接細胞をとる検査で、良性・悪性の鑑別には最も診断率が優れた方法です。痛みは、腕からの採血とほとんど同じです。通常4~6日でエコーガイド下に細胞診を行って、さらに正確な診断をめざしています。結果はなるべく早くご報告しております。