甲状腺ホルモン製剤には以下の4種類があります。
口から飲んだT4製剤の70〜80%が小腸から吸収されます。血清T3の80%は吸収されたT4から変化したものなので甲状腺ホルモンの補充療法は通常、合成T4製剤だけで充分です。血中半減期(血液中にあるお薬の濃度が半分になる時のこと)が約7日と長いため、1日1回投与でも血液中のT4濃度は安定しています。また内服を中断しても、すぐには血液中の甲状腺ホルモン濃度が下がりません。
T4製剤の吸収をさまたげる薬物との併用には注意が必要です。コレスチラミン(コレステロールを下げる薬)、鉄剤(造血剤)、アルミニウム製剤(胃薬)などです。
口から飲んだ合成T3製剤のほぼ100%が吸収されます。T3は速やかに吸収されるため、内服した後の血中濃度は2〜4時間後にピークに達します。血中半減期は約1日と短いため血清T3濃度は内服後の時間によって変化し、一定ではありません。
ウシ、ブタなどの甲状腺の抽出物であり、製剤ごとの甲状腺ホルモン量が必ずしも一定していません。
日本では、バセドウ病の治療を抗甲状腺剤で始めることが一般的です。これは、抗甲状腺剤(甲状腺のホルモンを合成する機能を押さえる薬)を毎日定期的に服用するものです。抗甲状腺剤には、チアマゾール(メルカゾール®)とプロピルサイオウラシル(チウラジール®、プロパジール®)の2種類があります。内服を始めると早い方では1ケ月、遅い方でも3〜4ケ月後には血液中の甲状腺ホルモン値が正常になり、症状もなくなってきます。
この治療で大切なことは、次の4つです。
毎日きちんと忘れず内服すること
ヨード分を過剰に摂取すると薬の効きが悪くなるので気をつけること
定期的に甲状腺ホルモンの量を調べながら適切な量に減らす(もしくは増やす)こと
副作用のチェックを定期的にすること
次第に血液中の甲状腺ホルモン値は正常になり、次に脳下垂体から出ている甲状腺刺激ホルモンが正常となり、そのうち甲状腺刺激抗体(TRAb)が少なくなっていきます。甲状腺刺激抗体が体の中から消えると抗甲状腺剤の中止を考えます。
抗甲状腺剤の治療の問題点は、定期的な検査・通院が必要であること、抗甲状腺刺激抗体がいつなくなるのか予想できないことです。甲状腺刺激抗体が高いまま薬をやめてしまうと、高確率で再発すると言って良いでしょう。
抗甲状腺剤は長期にわたって続けなければなりませんが、きちんと内服して甲状腺ホルモンを正常値に保てば症状もなく、健康な方と全く変わりのない生活(日常生活、運動、妊娠・出産など)ができます。人生において病気のために制限されることは何もありません。
抗甲状腺剤の副作用について
これは、甲状腺ホルモンを減らす薬ではありません。甲状腺ホルモンが非常に多い場合には動悸、手のふるえなどがでてきます。これらの症状を和らげるために使うお薬です。しかし、喘息や重症の心不全がある方は悪化することがありますので使えません。
ヨードは甲状腺ホルモンの原材料の一つですが、不思議なことにヨードを大量に服用すると逆に甲状腺ホルモンの産生がおさえられ、血液中の甲状腺ホルモンの量が減ります。
これを利用して、甲状腺クリーゼやバセドウ病の手術前など、急速に甲状腺ホルモンを下げなければならない時に短期間のみ使われます。ヨード剤を長期にわたって使っていると効果がなくなり、また甲状腺ホルモンが多くなってしまうことがあります。(エスケープ現象)
甲状腺の大きさが小さく、抗甲状腺剤が内服できない(副作用のため)バセドウ病の患者様には、長期間にわたって効果が持続する場合もあります。