院長・理事長対談 世界レベルの甲状腺医療を気軽に勉強できる病院として 世界レベルの甲状腺医療を 気軽に勉強できる病院として

院長

宮内 昭

Akira Miyauchi

1985年、甲状腺学会より七条賞を受賞。2007年、同学会より三宅賞受賞。2008年、内分泌学会よりBest Endocrine Surgeon of the Year賞を受賞。2012年アジア内分泌外科学会Chairman就任。2016年度Light of Life Honor賞を受賞。2017年、国際内分泌外科学会の次期会長(2019-2021年)選出。隈病院で世界水準の医療を目指す。

理事長

隈 夏樹

Natsuki Kuma

プランナーとして、様々なIT系の企業における製品企画および販売戦略立案などを行っていたが、 2000年に医療法人神甲会 隈病院の経営企画部部長を経て副院長に就任。CS・ES向上、安全対策、広報、新建築の立案、設備/機器導入、そして2005年の電子カルテの導入を初めとしたIT化の推進などを行う。2010年に医療法人神甲会の理事長に就任。

隈病院は1932年に初代院長の隈鎮雄により開院。
その後、第二代院長の隈寛二によって甲状腺専門病院となり、医療法人化。
現在、第三代院長の宮内昭と第二代理事長の隈夏樹により特定医療法人としての道を歩んでいる。
わずか58床の民間専門病院でありがながら、米国より甲状腺の第一人者が勉強に訪れるほど世界でも高いレベルの施設に成長している隈病院。
現在、院長と理事長が役割分担をして病院運営を行っている。
次々と卓越した業績が出される背景には院長と理事長の二人三脚の体制がある。
隈病院が発展してきた経緯や、今後の日本全体の甲状腺医療の教育を担う施設としてどうあるべきか? 院長 宮内昭と理事長 隈夏樹が語った。

Section 01

院長と理事長の役割を分担し、高いレベルの医療提供体制を実現。 院長と理事長の役割を分担し、高いレベルの医療提供体制を実現。

Q1 院長と理事長が兼任という
病院も多くある中で、
隈病院では院長と理事長が
どのように役割分担を
しているのですか。

宮内

大まかにはソフト面とハード面で役割分担をしています。具体的には臨床や研究、医師・看護師・技師等の指導などいわゆる医療にかかわるソフト面は私の担当で、経営面、特にハード面は理事長にお任せしています。この分担は病院運営で上手く機能しています。例えば子育て中の職員のための院内保育所「こぐまえん」の設立も理事長が中心になり実現しました。
患者さんに対して高いレベルの医療を提供するためには、病院経営の安定に加えてソフト面とハード面の両方の充実が不可欠です。理事長がハード面の充実のために対応してくれることで、私は医療のレベル向上に専念できています。

私は父である先代の隈寛二のやり方をそばで見てきました。父は医師として尊敬できる素晴らしい人でしたが、財務に関してはやや大雑把なところがありました。今思えば価格についての吟味をしっかり行わず、お金の用途を追及していないこともしばしばあったように思います。
私自身は医師ではありません。医療ではない業界でITの知識を得たり、経営などの実務経験を積み重ねたりしてきました。その経験から、医療機関は適切な資金を投資して病院の価値を向上させるということが、得意ではないように感じていました。そのような部分だけでも専門に担当する職員がいると、病院経営が安定するのではないかと考えています。

Section 02

手術や研究に邁進したい医師から子育て中の女性医師まで、多様なニーズにこたえる 手術や研究に邁進したい医師から子育て中の女性医師まで、多様なニーズにこたえる

Q1 医師が働きやすい
環境を作るために
どのようなことを
意識しているのでしょうか

良い環境を提供することで医師が余計な心配なく医療に集中でき、高いパフォーマンスを発揮できればと思っています。たとえば、子育て中の職員や女性医師にも活躍してもらうため、時短勤務やバックアップ体制、院内保育所「こぐまえん」の整備などを行ってきました。勤務時間中には医療に集中してもらう一方で医師の無駄な残業をなくし、有給休暇をしっかり使ってもらうなど、勤務時間外には仕事を忘れてリフレッシュしてもらう体制を整えています。また、自由に研究ができる環境も整えています。一般病院の多くは診療以外、つまり経営に直結する診療報酬点数が付く部分以外にお金を使うことが難しいこともあります。しかし、隈病院では研究をして世界の甲状腺医療の進歩に貢献することが病院としての医療の質の向上につながると考えています。そのことは病院の理念にも記載されています。

宮内

医師や医師以外の職員でも学会で積極的に発表し、論文を執筆する体制を整えています。論文の英文校閲料や投稿料は病院が負担します。そして、投稿した論文を多くの方々にみてもらうため、閲覧者がお金を払わなくても論文を読むことができるオープンアクセスにしています。お金を病院が負担してオープンアクセスにすることで、多くの人に発表した論文を読んでいただけています。

論文をオープンアクセスにできることは、院長から聞くまで知りませんでした。海外の論文を読みたいときにすべて購入しなくてはいけないので、この時代には不便だなと感じていたところでした。そのため、オープンアクセスの話を聞き、すぐに準備を進めたのです。「もうそんなにお金は出せない!」というくらい、論文を書いて発表する医師が増えたら面白いかもしれません。

宮内

国際学会でも積極的に発表してもらいたいと思っています。しかし、海外で発表するためには金銭的な負担が大きくなります。そのため当院では、学会への旅費は病院で負担するなど、国際学会へのモチベーションを高めてもらっています。
当院では医師だけでなく細胞検査士が台湾の学会に招聘されるなど、医師以外のスタッフも国際的に活躍しています。人前で発表したり教えたりするためには、その準備のために勉強をしなくてはなりません。そうすると、その人自身の知識や能力が上がり、結果的に医療の質の向上に繋がっているのです。

Q2 多様なニーズに
こたえる体制が
整っていますね

宮内

診療を頑張りたいという方だけでなく、学術的な活動にも積極的に携わりたいという方にとっても良い環境が整えられています。とはいえ、論文発表はもちろん強制されるわけではなく、とにかく臨床や手術に邁進したい!という方も歓迎です。甲状腺に関しては臨床も研究も幅が広い分、ニーズに合わせた働き方が提供できると考えています。

Section 03

甲状腺の専門家は減っているが患者さんは減っていない 甲状腺の専門家は減っているが患者さんは減っていない

Q1 日本全体の甲状腺医療の
質の向上を目指すにあたり、
日本の甲状腺の教育には
どういった課題があるのですか。

宮内

日本の甲状腺の教育における非常に大きな課題は、大学で甲状腺の専門家が減ってきているということです。内科外科ともに、甲状腺を専門とする主任教授が少なくなってきています。指導者がいないと後進が育ちません。大学で新たな甲状腺に関しての研究を立ち上げることも難しくなっているのです。しかし、隈病院では甲状腺の豊富な症例があり、専門医はもちろんのこと、学位取得にもつながるレベルの論文も作成することができます。
また、革新的な新薬が出てきていないということが甲状腺の指導者が減少している要因かもしれません。けれども、だからこそ甲状腺分野はまだまだ発展する余地がたくさんあります。何より患者さんの数は昔と同じだけいます。甲状腺の指導者や専門家が減る一方で、患者さんは減っていないのです。

Section 04

世界最高レベルの甲状腺医療を気軽に勉強できる施設として貢献していく 世界最高レベルの甲状腺医療を気軽に勉強できる施設として貢献していく

Q1 隈病院では今後の甲状腺医療における
「教育」をどのように考えているの
でしょうか

宮内

大学での指導者が少なくなる中、今後の隈病院は日本全体の甲状腺を診る医師の教育も担っていかなくてはなりません。だからこそ、甲状腺を勉強したい医師の入職は大歓迎です。ほとんど甲状腺に関わったことがなかった医師でも、2年間隈病院で修行すれば甲状腺に関してはどこにいってもほぼ通用する人材になれます。今まで呼吸器外科医や小児科医、若手医師、女性医師まで多様な人材が入職し、甲状腺のスペシャリストへと成長する姿を見てきました。当院には指導医も多数在籍しており、甲状腺や内分泌に関する専門医は一通り取得することができます。

見学も大歓迎です。最近は1日だけの見学ではなく、短期滞在も受け入れています。国内からだけでなく2017年は中国から来られた先生が2週間、2018年は、マレーシアから来られた先生が3か月間滞在されました。今後は、国内外から勉強に来られる先生のためにさらに見学体制の整備に取り組む予定です。

宮内

おかげさまで韓国、中国、マレーシアなどアジア各国だけでなく、オーストラリア、カナダ、アメリカなどさまざまな国からたくさんの先生が見学・研修に来てくれています。先日は隈病院で推進している甲状腺微小癌の非手術経過観察の視察と共同研究のために、アメリカの医師がフルブライト研究者として隈病院に来られました。アメリカでも一流の大学で准教授を務められている方です。世界レベルで見ても甲状腺医療を勉強できる施設と認識してもらえているのではないでしょうか。

Q2 それでは、
最後に甲状腺医療を
勉強したい医師に向けて
メッセージをお願いします。

宮内

隈病院では世界レベルの甲状腺医療を患者さんに提供しています。甲状腺医療初心者の方も当院で学べば、どこの病院に行っても甲状腺の専門家として活躍することができます。臨床家として手術をたくさんされたい方から研究や論文執筆に取り組みたい方までさまざまな医師に満足していただけると思います。まずは見学から気軽にお越しください。手術研修や学位取得など、医局からの定期的な派遣もいつでもご相談ください。

隈病院では多様な働き方が可能です。手術や研究に邁進したい医師だけでなく、充実したバックアップ体制で子育て中の女性医師も内科・外科共に活躍しています。医師が医療そのものに専念できる環境をさらに充実させていきます。また、隈病院では先代、先々代の院長が率いてきた頃から新しいことにどんどん取り組んでいる歴史があります。データベース、IT化、病理部、細胞診、精神的なケア、非手術経過観察…我こそが新たな医療を作っていくのだという意気込みにもお応えできる環境が整っています。