2021.08.10

バセドウ病の治療 (ばせどうびょうのちりょう)

  • バセドウ病
  • 手術
  • 甲状腺の病気の治療
  • 甲状腺ホルモン

はじめに

バセドウ病の治療としては、薬物治療(抗甲状腺薬内服)、放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)、手術の大きく 3 つがあります。ほとんどの方がまずは薬物治療を行います。

バセドウ病の治療ではまず、血液中の甲状腺ホルモンを低下させ、正常に戻すことが目標になります。甲状腺ホルモンを下げることにより、動悸、体重減少、倦怠感などの甲状腺中毒症状も軽快します。

それぞれの治療法を比較してみましょう。

薬による治療

甲状腺ホルモンの産生を抑える抗甲状腺薬を毎日決められた量内服していれば、徐々に甲状腺ホルモン産出量も低下します。甲状腺中毒症状は内服直後に良くなる事はありませんが 2 週間後くらいから少しずつ良くなりはじめ、一般的には 1〜2 か月もすればかなり良くなります。

薬による治療について、詳しい内容を下記の記事にまとめています。合わせてお読みください。
 
抗甲状腺薬開始後、一番大事なことは副作用に注意することです。どんな薬でもそうですが、抗甲状腺薬にも副作用があります。特に重要な副作用として、白血球が突然減って体の抵抗力が弱り、高熱や喉の痛みが出ることが稀にあります(1000 例に 1 例程度と報告されています)。放置していれば白血球は下がったままで大変危険な状態になります。抗甲状腺薬内服開始後、38 度以上の高熱がでれば必ず病院を受診してください。その他、蕁麻疹などの薬疹や肝障害の副作用がありますが、早期に適切な処置をすれば改善します。そのため、定期的な副作用チェックが必要です。(抗甲状腺薬の詳細については別にリンクがあります)

甲状腺ホルモンの量が正常まで下がって症状が落ち着けば、運動制限も特になく、健康な時と同じような生活が過ごせますが、抗甲状腺薬の内服は欠かせません。もう完治したと思い薬の内服を自己判断で中断したり、不規則な内服になったりしがちですが、ここで油断すると、しばらくして最初の甲状腺中毒症の状態に逆戻りする事が多いのです。定期的に検査を行いながら抗甲状腺薬の内服量を調節していきますが、ご自分の判断で調節しないことが大事です。

甲状腺機能が安定すれば薬の量も減り、通院の間隔も 2~3 か月に一度程度でよくなりますが、抗甲状腺薬による治療は2年ほどかかります。抗甲状腺薬を中止する時期は、検査結果や身体所見を見ながら決定していきます。担当医と良く相談しながら中止時期を決定することが大事です。

2年間内服しても抗甲状腺薬の中止が出来ない時は、そのまま継続して内服していくか、あるいは別の治療法に変更することがあります。また、抗甲状腺薬による副作用で内服の継続ができない場合も他の治療方法に変更する必要があります。

アイソトープ治療

その治療法の一つに放射性ヨウ素を使った放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ療法)という治療があります。この治療は外来で受けることができ、効果も確実で安価な治療です。毎日内服する抗甲状腺薬とは違い、予約日に1回放射性ヨウ素のカプセルを内服するだけで、治療は終了します。甲状腺の大きさによっては複数回の内服が必要になる事があります。内服すると放射性ヨウ素が甲状腺に集まり、甲状腺の組織を破壊し、甲状腺が小さくなります。その結果、甲状腺ホルモンを産生する力が弱まります。この治療後多くの方は甲状腺機能低下症になります。その場合は甲状腺ホルモンを甲状腺ホルモン剤で補わなければいけませんが、甲状腺機能低下症の治療に使う甲状腺ホルモン剤にはほとんど副作用はありません。検査も年2回程でよく、抗甲状腺薬の治療よりはるかに楽になる事が多いです。

アイソトープ治療について、詳しい内容を下記の記事にまとめています。合わせてお読みください。

 

手術による治療

そのほか甲状腺の大きさが著明な場合やバセドウ病眼症がある場合、早期の妊娠を望んでいる場合で、抗甲状腺薬での治療が難しい場合などは手術も行われます。当院では約 1 週間の入院で手術を行います。全摘出ですので、術後には必ず甲状腺ホルモン剤の補充を行う必要があります。

手術療法について、詳しい内容を下記の記事にまとめています。合わせてお読みください。

 

関連記事