2021.09.10

バセドウ病の目の病気【バセドウ病眼症】 (ばせどうびょうのめのびょうき【ばせどうびょうがんしょう】)

  • バセドウ病
  • 甲状腺の病気の症状
  • 甲状腺ホルモン
  • 目の症状

病気の特徴

バセドウ病になると突眼[とつがん]症などの目の症状が出ることは、この病気が発見された頃から知られていました。突眼症、内分泌性眼症、甲状腺眼症、甲状腺関連性眼症などとも呼ばれています。

バセドウ病の方にとって心配のひとつは「目が出る(目がとびだす)」ことですが、全員に目の異常が出るわけではありません。まぶたの異常も含めると30%くらいの方に眼症の症状が出ると言われています。しかし、臨床的に明らかな突眼は、約10%程度です。
 

 

原因

バセドウ病の原因と同じく、自己免疫の異常が原因と考えられています。まぶたや眼球の後ろの組織に炎症が起こります。炎症がおこるとその部分がむくんで腫れるために、さまざまな症状が現れます。

症状

​まぶたの腫れ、結膜(白目の部分)の充血、まぶたがつりあがる、眼球突出、目の痛み、物が二重に見える、目がころころする、まぶしい、視力低下、物がゆがんで見える、視野全体に色が付いて見える、などの症状が見られます。

​眼球の突出は、眼球の後ろの脂肪が腫れてボリュームが増えるために、眼球が前へ押し出された結果生じます。また眼球の後ろにある目を動かす筋肉が腫れると、目の動きが悪くなり、物が二重に見えるようになります。さらに腫れあがった筋肉によって視神経が圧迫されると視力障害が起こります。

特に視力低下、ゆがんで見える、色が変わって見える症状は視神経が圧迫されることによっておこる症状ですので、治療を急ぐ必要があります。

検査

甲状腺機能検査を行います。それ以外に眼窩(眼球が収まっている部位)のMRI撮影により、目の裏の筋肉の腫れや炎症が起こっていないかを調べます。
 
眼科では目の表面に傷が入っていないか、眼球の運動が傷害されていないかなどを調べます。

治療

まずは血液中の甲状腺ホルモン値を正常化させることが必要です。メルカゾール®などの抗甲状腺薬をしっかり内服してください。
 
視神経の障害や目の裏の筋肉に炎症があれば、ステロイドパルス療法を行います。ステロイドパルス療法とは副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)の炎症をおさえる効果を利用して、目の裏の炎症を鎮める治療法です。3日連続してステロイドホルモン薬を点滴し、4日休むというやり方を3回繰り返します。パルス状に投与することからステロイドパルス療法と呼ばれています。

ステロイドパルス療法をおこなった後、3~6か月間にわたって少量のステロイドホルモン薬を内服する必要があります。ステロイドホルモン薬には一定の副作用がありますが、中止すれば副作用も消えますので心配しすぎないようにしてください。

ステロイドパルス療法で目の裏の炎症をすみやかに鎮めた後、目の裏の組織に放射線をあてて、炎症が再び起こらないようにします。設備の整った放射線科がある医療機関に通院する必要があります。

まぶたの腫れやつり上がる症状に対しては、ステロイドホルモン薬の局所注射を行う場合があります。ステロイドホルモン薬を用いた治療は炎症の強い時には効果が期待できますが、炎症が少ないときには効果が薄い可能性があります。そのため、前もってMRI検査で炎症の程度を確認しておく必要があります。

炎症が治まっている状態で、目の見開きに左右差がある場合には、ボツリヌス毒素の局所注射やまぶたの手術を行うこともあります。他には、腫れているまぶたの脂肪を切除する手術、眼球を引っ込める手術(眼窩減圧術)、眼球運動障害による斜視に対する手術などがあります。

注意すること

喫煙は目の症状を悪化させます。患者様が自分でできる唯一の予防法は禁煙です。

目の症状は徐々に良くなる方もいれば、目立った変化のない方もいます。急に治らないからといって悲観する必要はありません。時間はかかるかもしれませんが落ち着いてくることが多いので、あせらないことが肝心です。あまりに気にしすぎてうつ状態になる方もおられます。そういう場合はうつ状態の治療が必要になることもあります。
 
バセドウ病の心理的側面については、下記の記事に情報をまとめています。ぜひ合わせてご覧ください。
 

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