2021.09.15

甲状腺がんの病期(ステージ)と生存率 (こうじょうせんがんのびょうき(すてーじ)とせいぞんりつ)

  • 甲状腺の病気の症状
  • 甲状腺ホルモン
  • 目の症状

甲状腺がんの病期(ステージ)と生存率

他のがんと同じく甲状腺がんにもその進行度を表す指標としてステージがあり、分化がん(乳頭がんおよび濾胞がん)、髄様がん、未分化がんのそれぞれに対して違ったステージ分類があります。
 
分化がんのステージは年齢、腫瘍の大きさおよび周囲への浸潤の有無、リンパ節転移そして遠隔転移を組み合わせて構成されています。分化がんのステージはIからIVまであり、ステージが上がるほど病気が進行していることになります。当院の乳頭がん症例で見ると、遠隔転移のないステージI, II, IIIに分類される症例が術後10年で再発する確率(再発率)はそれぞれ7%, 17%, 31%です。そしてこれらに術前から遠隔転移のあるステージIVの症例も含めて、術後10年で甲状腺がんのために亡くなる確率(がん死率)は、それぞれ0% , 4%, 8%, 67%です。ステージが進む程、再発率やがん死率が上がることがわかります。髄様がんのステージには年齢は考慮されませんが、やはりステージIからIVまであり、概ね正確に予後を反映しています。
 
一方で進行が非常に早い未分化がんのステージはすべてIVとされ、がんの浸潤、リンパ節転移そして遠隔転移の有無によってステージIVA, IVB, IVCの3つに分類されます。当院の症例で解析すると、やはりステージが進むほどがん死率が明らかに高くなります。
 
他のがんでもそうですが甲状腺がんにおいてもステージ分類は、各症例の予後をある程度正確に反映します。予後のよい早期のステージの症例に対して広範囲な手術やアイソトープ投与などの過剰な治療はするべきではありませんし、逆に再発率やがん死率の高い進行したステージの症例に手控えた手術をしてしまうと、再発したときの対処に難渋することになります。ステージ分類は治療開始の時点で、先々を見越した治療戦略を立てるのに非常に役に立つのです。

関連記事