2021.09.30

甲状腺腫瘍とは 甲状腺にできるしこりの種類と症状・原因 (こうじょうせんしゅようとは こうじょうせんにできるしこりのしゅるいとしょうじょう・げんいん)

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「甲状腺腫瘍」だけではない? 甲状腺にできるしこりの分類

甲状腺は、のどぼとけの下あたりにある4cmほどの小さな臓器です。甲状腺にできる「しこり(結節)」のうち一部が甲状腺腫瘍と呼ばれ、悪性と良性に分けられます。
 
【甲状腺腫瘍(悪性)】
腫瘍とは、異常な細胞が無秩序に増殖し続けている状態のことを言います。そのうち、悪性腫瘍は、甲状腺がんやリンパ腫などがあり、治療が必要となります。
ただし、甲状腺のしこりのうち、悪性腫瘍の割合は約10%と、決して高くありません。
 
【甲状腺腫瘍(良性)】
上記と同じ腫瘍(異常な細胞の増殖によりできるしこり)でも、良性に分類される種類があり、濾胞腺腫と呼ばれます。
良性の甲状腺腫瘍は、近接する臓器への影響が少なく転移の心配がないため、治療の必要がないことが多いですが、大きな場合や悪性が疑われる場合などは、手術を勧められることもあります。
 
【その他の良性のしこり】
甲状腺にできるしこりには、「腫瘍」とは異なる種類のものがあり、良性に分類されます。
ほぼ正常な細胞が、刺激により部分的に数が多くなることで生じる「腺種様甲状腺腫」、水分がたまってできる「のう胞」の2種類が代表的なもので、ほとんどの場合治療を必要としません。
 
(図1)甲状腺のしこり

甲状腺腫瘍の症状

甲状腺腫瘍は、大きくなるまで自覚症状がほとんどなく、早期のうちに甲状腺機能に異常をきたすこともほぼありません。そのため、健康診断などの超音波検査で偶然発見されるか、触ってわかるほど大きなしこりになった段階でようやく気が付く場合が多いです。
 
それでも、体の不調など明らかな自覚症状がない場合が多いため、放置されてしまうケースもあります。上の図のように、甲状腺のしこりは大部分(90%)が良性のため、心配しすぎることはありませんが、治療が必要な悪性腫瘍である可能性もありますので、専門の病院で検査・診断を受けることをおすすめします。

甲状腺腫瘍の診断

甲状腺にしこりが見つかった場合、しこりの大きさとともに、悪性/良性どちらであるかを調べます。
当院では、既往歴や家族歴などについて問診した後、以下のような検査を行います。

1.血液検査
血液を採取し、甲状腺のはたらきの異常や全身への影響を各検査項目の数値によって判断します。
悪性腫瘍を疑う場合、特にサイログロブリンや特殊な腫瘍マーカーなどの項目の数値を確認します。

2.超音波検査
超音波(エコー)を用いて検査を行います。
しこりの有無や大きさがわかるほか、形や輝度から良性/悪性の判別にも役立ちます。

3.穿刺吸引細胞診
甲状腺に細い針を刺して直接細胞をとり、その組織を顕微鏡などで検査する方法です。
しこり(結節)の良性/悪性の診断に用いられます。
超音波検査などの結果から、明らかに良性と考えられるものについては、行わない場合もあります。

甲状腺腫瘍(悪性)の分類と治療について

悪性の甲状腺腫瘍には、甲状腺がんやリンパ腫があります。分類と割合は、下図の通りです。

(図2)甲状腺がん(結節性甲状腺腫)の分類と割合


甲状腺がんは種類によって特徴があり、検査や治療法、予後も大きく異なります。
代表的な治療法は、以下の3つです。

・手術
・放射線治療
・薬物治療
病巣を取り除く手術が、基本的な治療方法です。

乳頭がんの中でも特に、1cm以下の微小がんの場合には、進行が非常に遅いことが多いため、すぐに手術を行わず経過観察を選択することもできます。
当院では、手術を選んだ場合のリスクと患者さんの生活の質(QOL)を考え、患者さんと医師が相談して、方針を決めています。

>>>「甲状腺微小乳頭がんの非手術経過観察」へ(動画)

一方で、未分化がんなどの、予後が極めて厳しく、診断後即座に治療が必要となる種類の悪性腫瘍も存在します。
それぞれのがんの特徴や治療法などについては、以下のリンクを参照してください。

>>>「濾胞腺腫」へ
>>>「腺腫様甲状腺腫」へ
>>>「甲状腺乳頭がん」へ
>>>「甲状腺濾胞がん」へ
>>>「甲状腺髄様(ずいよう)がん」へ
>>>「甲状腺未分化がん」へ
>>>「甲状腺リンパ腫」へ

>>>「甲状腺がんの手術・治療」へ

良性のしこりは治療を必要とする?

甲状腺にできるしこりのうち、悪性でないものをまとめて甲状腺良性結節と呼びますが、その場合、体に害を及ぼすことはほとんどありません。
そのため、基本的には治療をせず、経過観察(おおむね 1年ごとに通院・検査)を行います。
良性のしこり(結節)の場合、長期間ほとんど変化しないことが多く、なかには縮小することもあります。
ただし、まれに増大することがあり、なかでも次のような場合には手術をおすすめしています。手術をおこなうのは、甲状腺良性結節の約5%です。

手術をすすめる例
1. 悪性の可能性が否定できず、強く疑いが残る (超音波検査で疑い、触診で硬い)
2. 血清サイログロブリン値が非常に高値
3. 充実性のしこり(結節)で大きさが4cm以上
4. 経過観察中に増大
5. 縦隔(鎖骨より下の胸の中)まで進展している
6. 気管、食道など他の臓器を圧迫している
7. 甲状腺ホルモンの過剰産生が原因と考えられる
8. 美容上の理由

甲状腺腫瘍 原因と患者さんの傾向

【悪性の場合】
明らかな原因はわかっていませんが、悪性腫瘍の場合、がん化するには、環境的な要因や、若年期の放射線被ばくの影響が指摘されています。
また、一部の甲状腺がんでは、遺伝的要因の割合が、他の種類よりも高いものがあります。
例えば、甲状腺髄様がんでは約40%と、その他の甲状腺がんが約2~5%程度と考えられているのに比較すると、かなり高い数字です。

患者さんの分布としては、いずれのがんも男性より女性が多い傾向にあります。
年齢別にみると、乳頭がん・濾胞がんといったおとなしい性格のがんは、50歳代が最も多く、その一方で、悪性度の高い未分化がんは、60~70歳代と高齢層が多くなります。
40歳未満の比較的若い層で、甲状腺がんがみられることは稀ですが、リンパ節転移など進行していく場合もあります。しこり(結節)が見つかったら、早いうちに専門の病院で受診するようにしましょう。

>>>「甲状腺がんの原因」へ

【良性の場合】
良性結節(良性腫瘍)の原因は不明です。20~50歳代に多く見られますが、自覚症状があまりないため、見過ごしているケースも考えられます。
見た目や外から触っただけでは、どのような悪性か良性か、どのような種類のものかはわかりません。違和感を覚えたら、放置せずに専門の病院を受診しましょう。

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