2021.07.20

甲状腺ホルモン不応症 (こうじょうせんほるもんふおうしょう)

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甲状腺ホルモン不応症とは

甲状腺ホルモン不応症とは、甲状腺ホルモンが血液中にたくさんあるにもかかわらずホルモンの作用が十分働かなくなる病気です。 4万人に1人くらいの頻度で認められます。

原因

甲状腺ホルモンは、細胞内の核で甲状腺ホルモン受容体と結合することで、標的遺伝子の発現を調節する作用があります。
甲状腺ホルモン不応症は、この甲状腺ホルモン受容体β型の変異によって生じることが分かってきました。
ただし、甲状腺ホルモン受容体遺伝子に異常が見られない場合でも、甲状腺ホルモン不応症と診断される場合もあります。

検査について

血液検査により甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値の確認、さらに遺伝子検査が必要です。
鑑別疾患として脳の下垂体腫瘍があるので、確認には頭部MRI検査が用いられます。
血液中では甲状腺ホルモン高値にも関わらず、脳内では甲状腺ホルモンが不足していると「誤認」して、TSHを作ろうとしています。

遺伝について

甲状腺ホルモン不応症は、常染色体優性遺伝形式の病気です。
およそ2分の1の確率で子どもに遺伝しますが、両親にこの病気がなかった場合でも、突然変異により発症する場合もあります。

症状と治療について

甲状腺のびまん性腫大や動悸などを自覚することがありますが、血液検査の異常だけで、自覚症状がない患者さんも多くいます。甲状腺ホルモン受容体でもう一つのα型は、心臓などに比較的多く分布するため、過剰な甲状腺ホルモンが心臓を刺激し、結果として、甲状腺ホルモンが多すぎる患者さんと同じような症状が現れる事があります。
バセドウ病と誤診されて治療を受けている場合もあるので注意が必要です。
一方で、甲状腺ホルモン作用が弱くなっている部位では、甲状腺ホルモンが少ない患者さんと同じような症状になります。
・心拍数が速くなる
・落ち着きがなくなる(注意欠陥多動障害)
・重症例では先天性甲状腺機能低下症と似た症状
・知能の発達の遅れや低身長、難聴

多くの患者さんは、甲状腺ホルモンの代償的な上昇により特に治療を受けずとも日常生活を送ることができます。
ただし、脈が速いなどの症状が出ている患者さんは、「心房細動」などに至る可能性もあるため、薬による治療を行う場合があります。 最近、指定難病に登録されましたので、診断がついた場合は申請によって医療費補助が受けられる場合があります。 

難病医療費助成制度についての解説

甲状腺ホルモン不応症は「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)による医療費助成を受けることができる難病に指定されています。しかし、似たような症状があるバセドウ病は指定難病に含まれていません。18歳未満の児童であれば、両疾病とも小児慢性特定疾病医療助成の対象疾病です。
小児のバセドウ病に関しては
「子どもの甲状腺の病気 乳児・バセドウ病」のページに記載しておりますのでご覧ください。

難病法による医療費助成の対象となるのは、原則として指定難病と診断され、病状の程度が一定以上の場合です。これは個々の指定難病の特性に応じ、日常生活又は社会生活に支障があると医学的に判断される程度であるため、症状や重症度等によっては医療費助成の対象とならない場合があります。

難病医療費助成制度を利用するには、指定医療機関に「臨床調査個人票」の作成依頼をし、申請に必要な書類と共に申請窓口に提出します。申請方法は各都道府県・市町村によって異なる場合がございますので、必ず一度、各申請窓口へお問い合わせください。
各都道府県・市町村申請窓口

申請が通ると、指定難病及び指定難病に付随しておこる疾病に対しての医療費のうち、健康保険(医療保険)の適用分が医療費助成の対象となります。対象疾病以外の治療費は対象外です。患者負担割合は2割(保険制度で1割負担の方は1割)で、世帯員全員の前年の市町村民税額等に応じて、ご負担いただく自己負担上限月額が決まっています。

当院も指定医療機関です。難病医療費助成制度についてのご相談、問い合せは担当医師、あるいは1階受付窓口で承っておりますので、お気軽にお声がけください。