2022.10.30

甲状腺の腫れ 見分け方について (こうじょうせんのはれ みわけかたについて)

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甲状腺とは

甲状腺は、首の前面・喉仏(のどぼとけ)の下あたりにある横幅4〜5cm程度の臓器です。蝶々が羽を広げた時の形に似ており、気管を包み込むようについています。

この甲状腺では「甲状腺ホルモン」が生成されます。甲状腺ホルモンは、新陳代謝や細胞の成長を促す作用など人体にとって重要な働きを持っており、私たちが生きていくのに不可欠なものです。甲状腺の異常により、甲状腺ホルモンの分泌が過剰となったり、逆に不足することがありますが、いずれもからだ全体でさまざまな症状を引き起こします。

正常時の甲状腺は柔らかく、外から手で触ってもほとんどわかりません。裏を返せば、手で触れることができる場合、甲状腺が腫れている状態である可能性があります。

腫れの種類と見分け方

甲状腺結節(しこり)

甲状腺が位置している喉仏の下あたりで、比較的狭い範囲の腫れ(しこり)が生じている場合、甲状腺結節の可能性が高いと言えるでしょう。大きさは進行度などによって幅がありますが、3㎝〜4㎝程度の時点で自覚して受診される方が多い印象です。

甲状腺結節(しこり)の約90%は治療の必要がない良性の結節ですが、甲状腺がんなど悪性腫瘍の可能性もあります。
悪性の場合でも、進行がゆっくりで命にかかわるような心配がないものもありますので、極端に恐れる必要はありません。病院では、血液検査や超音波検査などで専門医が良性か悪性かを診断しますので、このようなしこりが見られる場合は、まず診察を受けていただくのをおすすめします。
なお、しこりを触ってみると硬くて動かない場合や、痛みを伴う場合には、悪性度の高い腫瘍の可能性が高まります。躊躇せず、なるべく早期に病院にかかり、医師の診断を仰ぎましょう。
甲状腺結節(結節性甲状腺腫)

 
 

甲状腺疾患による腫れ:バセドウ病

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが異常に多くつくられることで、新陳代謝が過剰になり、頻脈や動悸、体重減少などの症状が現れる病気です。
甲状腺が広範囲に広がるように腫れあがっており、ゴムの様な弾性の腫れ方の場合はバセドウ病が疑われます。首部分の腫大が大きいときには、特に下を向いたり腕を上げたりするときに違和感が強くなります。
 


なおバセドウ病では首の腫れが初発の症状となることは稀で、強い疲労感や手足の震えなど新陳代謝の過剰による症状が先に見られることが多いのも特徴です。
 

甲状腺疾患による腫れ:橋本病

橋本病は自己免疫機能の異常で、甲状腺ホルモンの不足による甲状腺機能低下症を来す疾患です。甲状腺機能低下症状態になると、眠気や倦怠感、記憶障害、無気力などの症状が生じます。
のどぼとけの下あたりが全体的に腫れており、表面が硬くゴツゴツしているような腫れ方の場合は橋本病が疑われます。
 


こちらも首の腫れが初発の症状となることは稀で、多くの場合は体のむくみや無気力などの症状が先に現れます。甲状腺の腫れはゆっくりと進むため、腫れと気づかず「首が太くなった」などと認識していることも多いです。
 
 

そのほかの首まわりの腫れについて

※甲状腺の腫れと誤解されやすい、そのほかの首周りの腫れについて

首まわりに生じる腫れは他にもあり、甲状腺に由来する症状と区別がつきにくいことがあります。
最も多いのはリンパの腫れです。顎の下あたりや鎖骨のまわりで腫れが生じている場合、甲状腺ではなくリンパの腫れが起こっている可能性が高いと言えます。ウィルスや細菌がリンパ節に感染したことによる「リンパ節炎」が最も多い原因ですが、がん性の腫瘍の可能性もあります。
また、喉や気管の炎症による腫れや、頸部のう胞と呼ばれる喉ぼとけ付近にできる良性のしこりも、甲状腺の腫れとよく誤認されます。

ここまで、甲状腺の腫れ方について、疾患ごとに特徴を述べてきましたが、首には筋肉や血管などの管が通っていて、複雑に絡み合っていて、見分けることは困難です。
また、首の腫れが肉眼でわかるようになる段階には、他の症状がすでに発現していることも考えられますので、自己判断せずに病院で診断を受け、適切な治療を行うようにしましょう。

甲状腺の腫れは治る?

甲状腺の腫れは、治療によって取り除くことができます。良性の甲状腺結節(しこり)の場合は長期間ほとんど変化しないことがほとんどのため、経過観察をおすすめすることが多いですが、美容上の理由や、圧迫感により生活に支障をきたしている場合などは、手術による甲状腺切除を行う場合もあります。
バセドウ病や橋本病については、投薬等による治療で甲状腺ホルモンをコントロールする中で、次第に首の腫れがおさまっていく場合もあります。

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