2021.08.15

甲状腺がんの手術・治療 (こうじょうせんがんのしゅじゅつ・ちりょう)

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甲状腺がんの治療

甲状腺がんの治療法は、患者さんの身体の状態や年齢などを考慮して検討し決定します。
甲状腺がんの治療には
・手術(外科治療)
・放射線治療
・薬物治療(内分泌療法、分子標的療法、化学療法)
などがあり、悪性度の高い未分化がんを除いて多くが手術治療を基本とします。
 
腫瘍の大きさが1cm以下で、高リスク因子を持たないケースでは、積極的な治療(手術など)を行わずに、定期的な超音波検査を伴って、経過観察を行う場合があります。

種類ごとの治療法

1,甲状腺分化がん(乳頭がん、濾胞がん、低分化がん)の場合
 
甲状腺分化がんの場合、基本的には手術が標準治療になります。補助療法として、放射線ヨウ素内用療法を行う場合があります。
 

2,髄様がんの場合
 
髄様がんの場合は、主に手術での甲状腺全摘出術と、必要な場合のみ頸部郭清(けいぶかくせい)を行います。
高いリスクを伴う遺伝性の髄様がんなどの場合は、甲状腺全摘出術と中央区域ののリンパ節郭清を行い、頸部リンパ節転移がある場合には、外側区域のリンパ節郭清も行います。
再発や転移がある場合に、分子標的薬を使用する場合もあります。
 
3,未分化がんの場合
 
IVA期・IVB期で手術が可能な場合には手術を行います。術後に放射線治療もしくは化学放射線療法などの補助療法を行います。
そのほかのケースでは、集学的治療を行います。
 
 

手術の方法、術後の合併症

甲状腺がんの手術は、がんのある場所や大きさ、転移の有無などによって決定致します。
・全摘出 …甲状腺すべてを摘出する手術
・亜全摘術 …甲状腺の約2/3を切除する手術
・葉切除術 …片側の甲状腺(右葉あるいは左葉)を切除する手術
などがあります。
葉切除の場合、必要に応じて峡部(きょうぶ)も同時に切除(葉峡部切除術)します。
 
手術時間
 
一般的には120-180分程ですが、がんの進み具合、切除範囲などにより長時間となる場合があります。
 
入院期間
 
8日間を標準としていますが、術後経過などにより異なる場合があります。
 
費用
 
概算で15-30万円となります。実際にお支払い頂く金額は健康保険の状況や年齢、収入、また手術の病理結果により個人毎に異なります。
甲状腺を全摘出した場合、甲状腺ホルモンが分泌されなくなり、甲状腺機能の温存と合併症を軽減するために、再発のリスクが低いと判断される場合には、葉切除術を行うことを検討します。
 
気管傍リンパ節への転移が疑わしい場合、気管周囲郭清を行います。また、頸部リンパ節への転移が認められた場合は、頸部リンパ節全体を切除する頸部郭清を行います。また、必要に応じて、縦隔の上部を切除する上縦隔郭清を行う場合もあります。
 
甲状腺がんの手術において、切除範囲が大きければ大きいほど、甲状腺機能の低下、副甲状腺機能の低下、反回神経の麻痺など、合併症のリスクが高くなります。
甲状腺を切除することによって甲状腺の組織が減ると、甲状腺の機能が低下し甲状腺ホルモンが分泌されなくなります。それを放置すると新陳代謝が悪くなり、だるい、食欲がなくなるなどの症状が現れる場合があります。
甲状腺が半分残っている状態であれば、治療を行う必要がない場合が多いのですが、全摘術や亜全摘術などを行った場合は、甲状腺ホルモン薬により甲状腺ホルモンを補い続ける必要があります。
 
他にも、甲状腺全摘術の際に副甲状腺機能が温存できなかった場合、血液中のカルシウム濃度が低下して手足がしびれたりなどの症状が現れることがあります。その場合、ビタミンD製剤やカルシウム剤を摂取して低カルシウム血症になるのを防ぎます。
 
また、手術などによって反回神経の麻痺が起こると、声がかすれるなどの症状が現れますが、一時的な声のかすれは6ヶ月以内にその殆どが回復いたします。
 

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