2021.09.30

甲状腺がん (こうじょうせんがん)

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甲状腺がんとは

甲状腺がんは、甲状腺にできる悪性の腫瘍です。
「悪性」の腫瘍では、甲状腺のしこりの大部分を占める「良性」のしこりと違い、甲状腺の周りの臓器を壊しながら広がったり(浸潤)、頚のリンパ節に拡がったり(リンパ節転移)、あるいは血液の流れに乗って離れた臓器に転移したり(遠隔転移)する性質があります。これらの厄介な性質のために、病気が進んでいくと様々な症状が出ます。稀には生命にかかわる状況にもなります。
多くの場合原因は明らかではありませんが、ごく一部に遺伝性のがんがあります。

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甲状腺がんの罹患者は年間18,100人(男性4,700人、女性13,400人)と推計され、女性に多くピークは65-75歳にあります。死亡数は年間1,800人(男性600人、女性1,200人)と肺がんの1/40以下で、5年生存率は男性90%、女性95%と極めて良好です。多くの方は甲状腺がんになっても亡くならないことが分かります。
症状の出にくいがんで、検診や別の病気の検査中に突然発見されることも多いです。ごく一部に遺伝が関係しますが、大部分の甲状腺がんの原因は良く分かっていません。他の臓器のがんと同じように、周りに拡がったり、転移をしたりすることがあり、進行度(ステージ)を確認してからの治療になります。甲状腺がんの状態を評価する指標には表のようなものがあります。
ほとんどの方は手術による治療が大変効果的です。ステージが進行している方には、術後にアイソトープや薬物療法などが必要な場合があります。闘病についてブログなどで発信されている方も見られますが、多くの方は治療の後、人生設計を変えることなく元気に元通りの生活、仕事に戻っておられます。

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甲状腺がんの種類

甲状腺がんには大きく分けて4つの種類があります。詳しくはそれぞれの項目を参照してください。
甲状腺がんのうち一番頻度が高いのが ‘乳頭がん’ で、周りのリンパ節に拡がることが多いですが、離れた臓器への転移は稀です。増殖がゆっくりで、慌てずに治療ができ、手術によってよく治ります。
隈病院では、1cm以下の小さな「微小乳頭がん」の多くが、10年以上も悪化しないことを示しました。
現在では世界中で微小乳頭がんの経過観察を選択するようになりました。
‘濾胞がん’は手術前に診断することが難しい種類で、‘乳頭がん’と合わせて‘分化がん’と言います。一般に甲状腺がんと言えばこれらを指します。稀に‘低分化がん’が、術後の病理検査で見つかることがあり、進行が早く再発も起こりやすいので、見つかった時点で再発予防策を講じる必要があります。
さらに、ごく稀に診断されるは‘未分化がん’は増殖がとても速く、切除しても短期間のうちに再発することが多いので、診断後の平均余命は半年未満と非常に悪いです。‘髄様がん’では、遺伝性疾患との兼ね合いから、遺伝子検査や全身の検索が必要です。近年では、遺伝子変異によってがんの種類分けをしようという試みも進んでいます。

甲状腺がんの症状

甲状腺がんでは症状が出ないうちに検診などで発見されることがおおく、症状がないからと言ってがんでないとは言えません。甲状腺の周りに拡がることで声がかれたり、むせたり、圧迫感を感じたりすることがあります。
さらに気管や食道に拡がると、息が苦しくなったり食事が通りにくくなったりします。頚のリンパ節が腫れて発見されたり、肺転移による血痰や骨転移による骨折で発見されることもありますが、稀なことです。

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甲状腺がんの治療前・治療中に確認すること

甲状腺がんの悪さと年齢・性別

「年を取ってからのがんは進行がゆっくりだ。」という話を聞くことがありますが、甲状腺がんでは、若い人の方が命に係わる率が少ないことが知られています。
若い方の甲状腺がんも必ずしも早期に発見されるわけではなく、リンパ節転移が拡がっていたり、転移が見つかったりする方もいらっしゃいます。
それでも、不思議なことに、高齢の方に比べると手術でもすっきりと切除しやすく、術後の治療も効きやすくて経過も良いのです。ステージ分類でも、若い方の進行度は低く判定されます。若い方では転移が見つかっても、高齢者の転移のないがんと同程度の高い生存率です。体力や免疫力だけでは説明できない不思議な話です。
また、男性の甲状腺がんは女性と比べて悪性度が高く、再発もし易いことが以前から知られています。冒頭の5年生存率でも差がありましたね。原因はよくわかっていませんが、甲状腺がん独特のとても興味深い性質です。
増殖スピード
 写真(図1)は甲状腺がんの顕微鏡写真ですが、茶色く見えるのが増殖している細胞です。左の乳頭がんに比べると右の未分化がんでは茶色く染まった細胞が多いのがよくわかります。たくさんの細胞が増殖すると、しこりも急激に大きくなります。増殖している細胞が多い時には、再発も起こしやすいです。



図1 増殖している細胞を染色した顕微鏡写真
CT検査などの画像を見ると病巣の大きさが測定でき、大きくなるスピードが数字で判ります。写真左の14mmの肺転移病巣は1年で21mmまで50%大きくなりました。体積だと3倍以上になっています。個々の病巣の増殖スピードを知るのには大変良い方法です(図2)



図3 肺転移のCT写真

甲状腺乳頭がんや濾胞がんの手術後に、この数字の上昇程度を調べると病気の進み具合が判ることを、院長の宮内が考案しました。進行が遅い乳頭がんでは、何年も数値が変化しないこともよくあります。一方で、1年未満に数値が2倍以上になるような場合、進みは早く、生存率も悪くなります。体全体の病気の進行具合を一度に示すことができるとても優れた方法として、世界中の医師が日々の臨床で使っています。

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