2021.05.10

甲状腺クリーゼとは 症状や治療法について (こうじょうせんくりーぜとは しょうじょうやちりょうほうについて)

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甲状腺クリーゼとは

激しい甲状腺中毒症(血中甲状腺ホルモン濃度が高い病態)と全身状態の悪化により、高熱、循環不全、ショック、意識障害などを来たして生命の危険を伴う病態となることを「甲状腺クリーゼ」と呼びます。
致死率は10%以上と報告されており、緊急治療を必要とする甲状腺中毒状態です。

甲状腺クリーゼは、甲状腺中毒症の方で未治療あるいは甲状腺ホルモンのコントロールが不良な状態の方に、感染や手術などの強いストレスが加わることで発症するとされています。
多臓器における重篤な症状を特徴とし、嘔吐・下痢や黄疸を呈することもあります。
治療は、ほとんどの場合バセドウ病を基礎疾患としていますので、大量の抗甲状腺薬、無機ヨウ素薬、副腎ステロイドを投与します。また、各臓器の専門家と協力して全身的な治療を行います。
 

 

主な症状

1 中枢神経症状:
・不穏 (叫んだり暴れるなどしやすい状態)
・せん妄 (言動に一時的な混乱が見られる状態)
・精神異常、傾眠(けいみん) (意識が混濁しやすい状態)
・痙攣
・昏睡

2 38℃以上の発熱

3 1分間に130回以上の頻脈 (甲状腺中毒症では1分間に100回以上が多い)

4 心不全症状
・肺水腫 (血液の液体成分が肺の血管の外へ滲み出している状態)
・肺野の50%以上の湿性ラ音 (肺の異常音)
・心原性ショック (心臓の働きが急激に低下し、全身の臓器の働きが低下する状態)

5 消化器症状
・吐き気
・嘔吐・下痢
・黄疸

予防するには?

予防には、規則的な薬の服用を欠かさないことが最も重要です。
甲状腺機能亢進症では、投薬によって甲状腺ホルモンの分泌をコントロールすることで、甲状腺機能を正常化させる治療を行います。
治療中にも関わらず投薬を止めてしまうと、甲状腺機能が不良の状態に陥ってしまい、甲状腺クリーゼの発症に繋がってしまいます。
事実、甲状腺クリーゼの多くが、薬の服用を勝手に止めてしまったり、服用を忘れてしまった場合に発症しています。

また甲状腺クリーゼは、感染症によって発症する例も多く報告されています。甲状腺機能亢進症の患者さんは、感染症の予防や、罹患時の早期受診も心がけるようにしましょう。
 
 

早期発見のために

致死率の高い疾患であるために早期の診断は欠かせません。甲状腺機能亢進症を抱えている患者さんが、高熱が出たり意識がもうろうとした時などには、甲状腺クリーゼの可能性が考えられます。特に、甲状腺機能亢進症の代表的な基礎疾患であるバセドウ病の症状として、微熱が出ることはあっても38℃を超える発熱は通常起こりません。
バセドウ病を罹患している患者さんが、内服を中断した状態で38℃を超える発熱がある場合は甲状腺クリーゼが疑われるため、なるべく早く医師にご相談ください。

また、甲状腺クリーゼは頻脈や不整脈を伴うことが多いため、心エコー検査や血液検査、胸部X線によって心肺の状態を定期的にチェックすることで、早期発見につながりやすくなります。
甲状腺機能亢進症を罹患している場合は、専門医の定期的な受診を欠かさないようにしましょう。

主な治療法

集中治療室にて、呼吸や血圧の管理を必要とします。血中の甲状腺ホルモンを減らすために、ホルモンの合成や分泌を抑える甲状腺薬や無機ヨウ素を投与したり、甲状腺ホルモンの作用を減弱させるために、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の投与を行います。
それと同時に、発症のきっかけとなっている原因についても治療を行います。

(1) 甲状腺ホルモン産生・分泌の減弱
バセドウ病による場合、大量の抗甲状腺薬と無機ヨードを投与

(2) 甲状腺ホルモン作用の減弱
βブロッカーや副腎皮質ホルモンの投与

(3) 全身管理
一般的緊急処置、十分な輸液と電解質補正、身体の冷却と解熱剤

(4) 誘因除去

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