インタビュー

患者さんのために発展し続ける隈病院で働く誇り

頭頸部がんに関心を持ったきっかけは学生時代の実習経験

大阪大学医学部在学中にクリニカルクラークシップ(診療参加型臨床実習)で旧・大阪府立成人病センター(現・大阪国際がんセンター)に行き、頭頸部(とうけいぶ)がんの手術を学ぶ機会がありました。毎日、次から次へと再建手術のような大きな手術を見学させていただきました。今では学会も“日本耳鼻咽喉科(じびいんこうか)頭頸部外科学会”と名称変更されていますが、当時は耳鼻咽喉科が頭頸部がんの手術をするイメージはありませんでした。しかしこのときの経験で、それまで抱いていた耳鼻咽喉科へのイメージが大きく覆され、頭頸部がんの手術にも携わることのできる耳鼻咽喉科・頭頸部外科に興味を持ちました。

恩師との出会いがもたらした隈病院への道

前述のように学生時代から耳鼻咽喉科に興味を持ってはいましたが、医学部卒業後の初期研修時代にはさまざまな診療科を見る機会があり、どの科に進むか悩みました。内科的な部分と外科的な部分をバランスよく併せ持った診療科に進みたいと考えており、耳鼻咽喉科と消化器内科で迷いましたが、最後は初期研修で耳鼻咽喉科を回った際にお世話になった笹井 久徳(ささい ひさのり)先生との出会いが決め手となり、大阪大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室へ入局しました。
入局後は、大阪府内の関連病院で診療経験を積みつつ、途中4年間は大学院生として富山大学先端ライフサイエンス拠点中川研究室(現・富山大学医学部分子医科薬理学教室)に国内留学しました。2021年からの1年間は近畿大学病院でも耳鼻咽喉科の診療経験を積み、2022年よりさらに甲状腺の手術スキルを磨くために医局からの派遣で隈病院 頭頸部外科に赴任しています。
実は、笹井先生は私が入職する以前、隈病院 頭頸部外科で働かれていらっしゃいました。笹井先生の醸し出す雰囲気や人柄、仕事への姿勢に惹かれてこの道を選んだ私が、偶然ではありますが、後を追うようにして隈病院に赴任することができたのは、とても嬉しいことと思っています。

各分野に精通した職種が集う環境下で手術手技の向上が目指せる

入職後に実感した隈病院の特徴の1つが、医師だけではなくコメディカルや事務スタッフが皆、それぞれの分野に精通しているということです。そのため、さまざまな業務を周囲のスタッフに安心して任せながら、医師は診療や研究に集中することができます。さらに、病院全体での職種の垣根を越えた協力体制によるシステマティックな診療体制が構築されているので、外来、入退院、手術などの各場面で効率よく仕事ができます。
もう1つの特徴は、手術手技の教育ノウハウが確立されており、若手でも効率よく技術を習得できることだと思います。年間手術件数も1,500件以上*にのぼるため、1度学んだ技術を繰り返し実践して着実に身につけることができます。私自身、隈病院に入職してからまだ1年ほどですが、数多くの症例を経験することができており、これからもより良い手術手技の獲得のため、積極的に手術に取り組んでいきたいです。

大学院生時代から抱いていた甲状腺がんの研究への思い

もともと頭頸部外科に興味を持ったきっかけががんだったため、手術はもちろん、がんの研究にも興味がありました。隈病院では臨床と並行して甲状腺がんの研究の分野にも取り組んでいきたいと考えていました。名誉院長の宮内 昭(みやうち あきら)先生が提唱された、微小な甲状腺がんに対するアクティブサーベイランス(積極的経過観察)は世界的にも認められています。“がんなのに経過観察が可能”な点は甲状腺がんの大きな特徴です。この特徴自体が大変興味深いですし、その研究によりがんのことを深く知ることができるかもしれません。

臨床だけでなく研究面でも充実した隈病院の指導体制・環境

隈病院に入職して、医師だけでなく、看護師、検査技師の方々が内科、外科、病理診断学、画像診断など、さまざまな分野で研究を行っている様子に刺激され、私も甲状腺がんの研究をしたいという気持ちがさらに強くなりました。現在は臨床データに基づいた甲状腺微小がんのアクティブサーベイランスに関する一部の解析を担って研究しています。臨床データと基礎研究の部分を結びつけるような研究にも取り組んでみたいと考えています。

頭頸部外科医としてさらなるレベルアップを目指す

もちろん、まずは臨床スキルを身に付けることが重要ですので、手術手技のさらなる上達を目標に今後もコツコツと診療に取り組み、習得し続けていきたいと思っています。
隈病院には甲状腺の分野で世界的に活躍する先生方が身近にたくさんいます。そういう環境で日々仕事ができること自体、貴重な経験だと思いますので、このチャンスを生かして先輩医師からいろいろと学び続けていきたいです。
 
兵庫県外からもたくさんの患者さんが来院される様子を見ていると、隈病院は甲状腺分野で全国から頼りにされている病院なのだなと感じます。「患者さんの力になりたい」という思いで歴代の先生方が努力を重ねてきたからこそ今の隈病院の姿があり、今後もさらに発展していくのだろうと思います。1人の職員としてそのような病院で働けることに誇りを感じると同時に、自分自身も歴代の先生方の思いと取り組みを引き継いでいく一端を担わなければと感じています。そんな思いが「頑張らなあかんな」というモチベーションになっています。
 
*2022年1年間の統計データより

このインタビューのドクター

頭頸部
外科

隈病院 頭頸部外科
山本 雅司医師

大阪大学医学部在学中にクリニカルクラークシップ(診療参加型臨床実習)で頭頸部がんの手術を学んだことをきっかけに、耳鼻咽喉科・頭頸部外科に興味を抱く。医学部を卒業後、同大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室へ入局。大阪府内の関連病院や大学病院で診療経験を積み、より甲状腺の手術スキルを磨くために2022年より隈病院 頭頸部外科に入職。頭頸部外科医としてのレベルアップを目標に診療を行いつつ、研究活動にも精力的に取り組んでいる。

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