2021.07.25

バセドウ病の手術について(適応範囲・手術の内容など) (ばせどうびょうのしゅじゅつについて(てきおうはんい・しゅじゅつのないようなど))

  • バセドウ病
  • ヨウ素
  • 手術
  • 甲状腺の病気の治療
  • 甲状腺ホルモン

バセドウ病に対する手術の目的

バセドウ病の治療法の一つに手術があります。バセドウ病では異常な自己抗体(TRAb、TSAb)が甲状腺に作用して過剰な甲状腺ホルモンが作られることで甲状腺機能亢進状態となります。そこで、ホルモンを作る場所である甲状腺自体を取り除き、甲状腺ホルモンが過剰にできない状態にするのが手術です。術後には、自己抗体が低下していきます。
 

どんな方に手術を勧めるか

以下のような患者さんに手術をお勧めします。
 
  • 副作用(無顆粒球症や肝障害)のために抗甲状腺薬の継続が困難な人
  • 抗甲状腺薬を長期間中止できない人
  • 甲状腺腫が大きく抗甲状腺薬で治りにくい人
  • バセドウ病に手術を要する腫瘍を合併している人
  • 妊娠中または近々妊娠を希望している人
  • 早期に治癒を希望する人
  • 眼球突出が高度な人

バセドウ病の手術

当院では現在、甲状腺自体をすべて取り除く甲状腺全摘術を行っています。術後は甲状腺ホルモンを体で作ることができなくなるため、甲状腺ホルモンを薬として一生涯内服する必要があります。かつては、術後に甲状腺ホルモン薬を内服しなくてもいいように甲状腺を少しだけの残す甲状腺亜全摘術が行われていましたが、残した甲状腺が再び大きくなって、またバセドウ病になってしまう(再発)ことがあること、亜全摘術では異常な甲状腺自己抗体の低下を期待できないことから、眼症妊娠時の問題が残り、当院では現在行っておりません。
 
手術の合併症:
術後は、一生涯甲状腺ホルモン薬を内服する必要があります。
稀に、声帯麻痺(声がかれたり飲食でむせたりする)や副甲状腺機能低下(血液中のカルシウムが低くなり手や顔面がしびれる)という合併症が起きることがありますが、多くは一時的で時間とともに回復します。

バセドウ病患者さんでは、甲状腺の血流が通常よりかなり豊富になっています。そのため手術中および術後の出血のリスクは他の甲状腺手術よりも高くなっています。術後出血した場合は、急速に呼吸困難となるため緊急で再手術を行い止血することもあります。

甲状腺手術…入院からの流れ

入院前

バセドウ病の手術は甲状腺機能が落ち着いた状態で行わないと危険です。急激で重篤な機能亢進症である甲状腺クリーゼを起こすと命の危険がありますので、抗甲状腺薬やヨウ素剤、β遮断薬(脈拍を抑える薬)で、まず、甲状腺機能をしっかりとコントロールします。
甲状腺が大きいバセドウ病では、手術時の出血が多くなること予想されますので、術前に自己貯血(自分の血液を保存しておき、輸血が必要な際にそれを本人にもどすことで他人からの輸血を避けることができます)をすることがあります。

入院

甲状腺ホルモンのコントロール状態の確認、体調の確認を行います。
甲状腺機能が安定していない方は、手術直前の短期間に強力な甲状腺機能のコントロールを行う必要があるため、早めの入院をお願いしています。

手術当日朝

朝から絶食、水分も禁止です。脱水にならないよう点滴をします。

手術終了後

術後3時間ほどしたらお水が飲めます。トイレや洗面にも歩いて行けます。
手術翌朝までは、リカバリールームでの十分な監視下にお過ごしいただきます。

手術翌日

元の病室へ戻り、食事ができます。首のストレッチ運動を開始します。
甲状腺ホルモン薬などの内服を開始します。

術後、5日以内

傷や体全体の状態を確認しながら、血液検査、声帯の検査を行います。通常は術後5日程度で退院できます。

退院後1-2週間

学校や職場に復帰できます。

退院後1ヶ月

外来再診し血液検査を行って、甲状腺ホルモンの投与量を調節します。
手術後の傷の治り具合の確認と病理結果を説明します。

その後は定期的に血液検査を行い甲状腺ホルモンの投与量を調整します。

詳しい内容は、下記のコンテンツをご参照ください。

 

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