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2020.06.27(土)学術活動

甲状腺専門家のバイブルThe Thyroidに甲状腺微小癌の積極的経過観察が掲載


The Thyroid第11版

甲状腺の専門家や甲状腺について勉強する医師にとって最も信頼性が高く最もよく読まれている教科書はWerner & Ingbar’s The Thyroidでしょう。この本は甲状腺に関する基礎的なことから臨床的なことまで甲状腺の専門家に必要な最新、最善の事柄を記載しています。まさに甲状腺医にとってはバイブルと言える教科書です。さて、この6月にThe Thyroid第11版が出版されました(図)。この教科書は1955年に初版が発行、6-7年毎に改訂され、今回は、初版から65年で第11版となります。今回の第11版はLewis E. Braverman先生David S. Cooper先生およびPeter Kopp先生の編集です。この教科書の執筆者はその時点での沢山の一流の専門家が選ばれてきました。しかし、残念ながら、そのほとんどは米国を中心とする北米とヨーロッパの先生であり、日本を含むアジアから選ばれたことはほとんどありません。過去には、1996年に出版された第7版に長崎大学の長瀧重信先生と横山先生がヨウ素の甲状腺機能に及ぼす影響の章を執筆されていますが、その他には見あたりません。今回、大変嬉しいことに、私と当院の伊藤康弘先生に、上記の三人の編集者から「甲状腺微小乳頭癌」の章の執筆を依頼されたのです。
 最近ほぼ30年間で甲状腺癌の患者が世界中で急速に増加しています。しかし、甲状腺癌による死亡はほとんど変化がありません。よく見ると増えているのは小さい乳頭癌です。一方、甲状腺以外の病気で亡くなった人の解剖にて甲状腺をよく調べると非常に高頻度で小さい甲状腺癌が見つかることが以前から知られていました。また、超音波検査と細胞診を用いて一般の住民の検診を行うと剖検とほぼ同じ頻度で甲状腺癌が発見されました。以上のことから、甲状腺癌の増加は主として画像検査の普及による発見の増加であり、その大部分は治療しなくても健康や生命に影響を及ぼさないものであろうと考えられるようになりました。つまり、過剰診断、過剰治療と考えられるようになったのです。宮内はこのことにいち早く気付き、1993年に隈病院にて低リスク微小乳頭癌の非手術経過観察を提案し、前隈寛二院長や他の医師の賛同のもとに、同意される患者さんには直ちに手術をするのではなく経過を見る(積極的経過観察)をして来ました。これは世界で初めての試みです。1995年から東京の癌研病院でも同様のトライアルが開始されました。神戸と東京でのトライアルの結果はほとんど同じであり、適切に選んだ低リスクの甲状腺微小乳頭癌の積極的経過が安全であること、病気が進行するのはごく一部であること、そのような患者さんはその時点で適切な手術を行えばその後再発はないことが明らかになりました。さらに、当院の様な甲状腺専門病院で十分に経験がある内分泌外科医が行っても、手術群の方が経過観察群より声帯麻痺や副甲状腺機能低下症などの不都合事象の頻度が高いこと、医療費も手術の方が経過観察の4.1倍高いことも明らかになりました。これらの結果を受けて、すでに、日本内分泌外科学会、アメリカ甲状腺学会でも積極的経過観察がこのような患者さんの取扱い方法として承認されています。さらに、ごく最近、日本甲状腺学会でも承認されました。
 今回、The Thyroidに採用、掲載されたことは、1993年から世界に先駆けて隈病院で取り組んできた低リスクの甲状腺微小乳頭癌の積極的経過が甲状腺専門家のバイブル的な教科書に認められたことを意味しており、大変喜ばしく誇らしいことです。

                                         2020年6月 隈病院 院長 宮内 昭

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