インタビュー

手術の経験を積み、甲状腺外科のスペシャリストになりたい

甲状腺を専門にしたい

私は川崎医科大学を卒業し、2年間の初期研修の後、大学の乳腺甲状腺外科の医局に入局しました。入局後は関連病院で一般外科医として2年間働いた後、川崎医科大学乳腺甲状腺外科に戻り2年間勤務しました。

乳腺甲状腺外科では、乳腺を専門にするか、甲状腺を専門にするか、将来どちらかを選ばなくてはなりません。その中でも「甲状腺を専門にしたい」と思ったのは、甲状腺の手術に魅力を感じたからです。

甲状腺の手術の経験を積みたくて隈病院へ

近年は多くの手術が腹腔鏡や胸腔鏡、ロボット手術を代表とする「鏡視下手術」になっています。一方、甲状腺の手術は医師が自分の目で術野を確認する「直視下手術」が大半です。そのため、甲状腺の手術には、外科医としての基礎力を養うことができるという魅力があると思います。

「もっと甲状腺の症例数の多いハイボリュームセンターで手術の経験を積みたい」と考えていた私は、医局の准教授より隈病院副院長の宮章博先生を紹介していただきました。「とにかく手術の経験を積みたい」という一心で、症例数も多い隈病院への入職を決めました。

レベルの高い手術に驚く

入職してみると、想像していた通り非常に多くの症例数があり、私も入職後約10か月で50~60症例を経験しました。勤務時間中は非常に忙しい毎日ですが、たくさんの手術を経験することができ、大きなやりがいを感じています。

最も驚いたことは、手術のレベルの高さです。隈病院では、質が高く、なおかつスピードが速い手術をすべての外科医ができるようになる教育体制が敷かれています。

また、若手の外科医にとっては甲状腺の手術だけでなく、手術の基礎全般を学べる環境です。甲状腺の手術では、糸結びや結紮など、外科医としての基本的なスキルが必要とされる場面が多数あります。他の分野ではさまざまな機械を用いた手術が主流になっている中で、比較的機械の使用が少ない甲状腺の手術は貴重です。一方で、NIMチューブなどの手術をしやすくするデバイスもそろっているので、その点も学べることが多いです。

診療科ごとの垣根のない環境で内科分野の知識も

隈病院には、診療科ごとの垣根もありません。どの先生も親切な方ばかりなので、相談しやすい環境があります。隈病院の外科医は手術だけでなく、外来も担当しています。外来では、健康診断で甲状腺の異常を指摘され、初診で病院に来られる患者さんも少なくありません。

私は外科医のため、内科分野についてはわからないこともあります。そのようなとき、内科の医師に外来で困ったことを質問すると、快く答えてくれます。そのおかげで着実に内科分野の知識も身につけることができています。術後の長期的な管理についても、内科の医師に何でも相談できるので助かっています。

「甲状腺」という専門性は強みになる

甲状腺の患者さんを診る施設は多くありません。そのため、先々のことを考えると甲状腺だけを診る甲状腺専門病院で働くことをためらう方もいるかもしれません。

しかし、甲状腺についての専門性を身につけていれば、どこの乳腺甲状腺外科や頭頸部外科にいっても「甲状腺に関してはあいつに任せておけば大丈夫」と言ってもらえる、唯一の存在になれるのではないでしょうか。隈病院で最低2年間、できれば4年間ほどしっかりと勉強すれば、どこの施設にいっても活躍できると感じています。

甲状腺外科のスペシャリストになりたい

隈病院は臨床研究にも力を入れています。珍しい症例も多数集まるため、論文作成のテーマも豊富です。私も既に、国内の学会での症例報告を経験しました。今後はもっと研究に取り組んでいきたいと考えています。

しかし、なんといっても現在の最大の目標は、正確さとスピードを兼ね備えた手術ができる、甲状腺外科のスペシャリストになることです。これからも、さまざまな手術を経験し、腕を磨いていきたいと思っています。

このインタビューのドクター

川崎医科大学を卒業後、大学の乳腺甲状腺外科医局に入局。入局後、直視下手術が大半である甲状腺の手術に魅力を感じ、甲状腺を専門にすることを決意。その後、症例数の多い隈病院へ。隈病院では手術の他に外来も担当し内科としても従事。臨床研究にも取り組み、国内の学会での症例報告も経験。正確さとスピードを兼ね備えた手術を目指し、日々修練を重ねる。入職後約10か月で50~60症例の手術を行う。2022年3月隈病院を退職。

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