インタビュー

臨床家として診療技術を高めていく

小児科医として参加した学会での出会い

私は大阪医科大学 医学部を卒業後、約13年間、小児科医として経験を積みました。小児科医は、基本的にあらゆる疾患を診ることが求められます。私も小児科医として経験を積む中で、小児科専門医・指導医のみならず、甲状腺 専門医や内分泌代謝科 専門医、アレルギー 専門医なども取得するなど、幅広い経験を積みました。その中でも、一貫して小児内分泌疾患の診療に力を入れ続けてきました。

隈病院への入職のきっかけは、小児科医として学会発表に参加したときのことです。学会では、甲状腺ホルモンの合成障害の症例について発表しました。その発表や質問している姿を見ていただいていた宮内院長から「隈病院で働かないか」と声をかけていただいたのです。

「レベルの高い場所でチャレンジしてみたい」

もちろん、有名な病院だったので隈病院の名前は知っていました。しかし、それまで隈病院との関わりはまったくありませんでした。入職を検討するうちに「隈病院であれば、一般病院で甲状腺の診療を行うよりもはるかにレベルの高いことができるのではないか」と考えるようになります。

そして最終的に芽生えたのは、「隈病院のようなレベルの高い場所でチャレンジしてみたい」という思い。しかし、ちょうど次に勤務する病院が決まっていたためすぐに入職にはいたりませんでした。3年経ったら隈病院に行くと決め、ほかの病院で内科医として経験を積んだ後に、隈病院へ入職しました。

即戦力として密度の濃い日々を送る

実は、ほかの病院に勤務をしていたときから週に1回は、隈病院の全診療科合同のカンファレンスに参加し、甲状腺の知識を深めながら当院に入職する日に備えていました。その甲斐もあって、入職後すぐに外来診療を担当させていただきました。

勤務時間中は非常に忙しい毎日です。外来の患者数は1日に60〜100名程で、患者さんの多い日には100名以上を診ることもあります。ただし、オンとオフがはっきりしており、勤務時間中は非常に密度が濃い一方で勤務時間以外ではしっかり休みをとることができます。有給休暇の取得も可能です。急な事情で休まなくてはいけなくなった場合にも、スタッフ皆でフォローしあう体制が築かれています。メリハリがある生活を送りながらも非常に高いレベルの医療を実践することができています。

また、隈病院には豊富なデータとともに、データを活用したり統合したりするシステムも整備されています。これらを活用して、論文執筆や学会発表などのアカデミックな活動に注力することも可能です。私も隈病院に入職以来、年に2回はコンスタントに学会発表に取り組んでおり、バセドウ病の薬物治療や若年者の甲状腺腫瘍について発表してきました。

忙しくても丁寧な指導を

隈病院は、甲状腺について深い知識や高度な技術をもつ医師が集まっている病院です。臨床にしても研究にしても、常にレベルの高い議論を行うことができる点は大きなメリットでしょう。

すぐ近くに、甲状腺疾患の第一人者が揃っている環境。先生方は皆忙しくはありますが、必要があれば質問することも可能です。私も若手の先生から質問されることがありますが、どんなに忙しくてもきちんと質問に答えるよう努めています。スペシャリストの先生であっても、きちんと周囲の先生たちの指導を行う姿を近くで見ているので、自分も同じように若手の先生たちを指導したいと考えているからです。このように、丁寧な指導のもと知識を共有しあう隈病院は、非常によい文化を持っていると思っています。

まだ解明されていない部分があるから面白い

私が考える甲状腺診療の特徴のひとつは「取り組んでいる人が多くはない分野である」ということ。甲状腺の専門家は限られていると考えています。たとえば、私が専門としている小児科の領域で甲状腺疾患を専門とする医師は、少ないでしょう。

甲状腺は、非常に奥が深い分野であると思っています。たとえば、甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンを補充すれば改善しますし、甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンを抑制すれば改善するでしょう。ただし、原因をきちんと解明して治療できるかどうかは別問題です。

甲状腺の異常には多彩な原因が考えられますが、まだまだ解明されていない部分もたくさんあります。その進歩を近くで見ることができるのは、非常に面白いですし、やりがいにもつながっています。

臨床家として生きていきたい

今後も、知識を深めるために、集めた症例をもとに継続的に論文執筆にも取り組んでいく予定です。隈病院に入職して初めて、小児科ではほとんど機会のなかった甲状腺腫瘍を診察する機会を得ました。その経験をもとに、若年者の甲状腺腫瘍をテーマにした論文を執筆したこともあります。

しかし、私は何かひとつを突き詰めて研究していくというよりも、日々患者さんと向き合う「臨床家」でありたいと思っています。今後も日々患者さんと向き合いながら、これまで以上に知識を深め、臨床家として診療技術を高めていきたいと考えています。

このインタビューのドクター

大阪医科大学医学部を卒業後、小児科医として経験を積む。小児科医として幅広い経験を積むなかで、日本小児科学会認定 小児科専門医・指導医、日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医、日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医・指導医、日本アレルギー学会認定 アレルギー 専門医などを取得。そののち、内科医として市中病院に勤務し日本内科学会 内科認定医、日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医を取得。隈病院へ入職後は主に外来診療を担当し、日々、多数の患者さんの診療に尽力。学会では、バセドウ病の薬物治療や甲状腺遺伝性疾患、若年者の甲状腺腫瘍などについて発表。日本甲状腺学会評議員、日本甲状腺学会臨床重要課題 甲状腺微少乳頭癌取扱いのポジションペーパー作成委員を務めた。2021年5月に隈病院を退職し、非常勤にて勤務。

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