同じ疾患の患者さんを少しでも多く治したい
私は幼い頃より甲状腺の病気で治療を続け、研修医の時に手術を受けました。
最初は医学部がない早稲田大学に入学。飛び級制度により3年間で早期卒業し、その後、医師になりたいという夢を叶えるため、愛媛大学の医学部に編入しました。
愛媛大学の医学部を卒業した後は、愛媛大学病院や済生会今治病院で一般外科の研修を受けました。進路を決める時期には消化器外科や乳腺外科にも興味があり、どの分野に進むべきか迷いました。しかし、最終的に甲状腺の分野に進むことを決めたのは、過去に自分自身が甲状腺の手術を受けて感じた「同じ疾患の患者さんを少しでも多く治したい」という想いからです。
症例数も多く知名度も高い隈病院へ入職
後期研修を終えた後は、隈病院ではない甲状腺専門病院で1年半ほど働きました。しかし、「多くの手技を経験してもっと甲状腺について勉強したい」と考え、国内には極めて少ない甲状腺専門病院の中でも症例数が多く、知名度も高い隈病院への入職を決めました。
外来から手術、その後のフォローまで全てを担当
以前働いていた病院は、若手の私が外来から手術までの全てを担当することはありませんでした。そのため、隈病院でも同じように、外来から手術まで全てを担当させてもらえないかもしれないと思っていました。
しかし、入職してみると思っていたのとは全く違う環境でとても驚きました。サポート体制が充実しており、入職してから3か月程度で外来から手術、その後のフォローまで全て任せてもらえたのです。また、先生方は優しく指導してくれる方ばかりです。「こんなことを質問してもいいのかな?」と悩むほどの些細な内容でも、論文を印刷して渡してくれるなど、とても丁寧に教えてくれます。看護師さんをはじめコメディカルの方々も甲状腺の分野に詳しく、たくさんご指導いただきました。
甲状腺外科専門医と甲状腺内科専門医を取得
隈病院に入職後、甲状腺外科専門医を取得しました。甲状腺外科専門医を取得するためには、最低でも100例の執刀症例数が必要ですが、私が隈病院にきて2年間で執刀した症例数は約200例です。専門医申請時には、最終的に約350例の執刀症例を提示しました。
また、私は外科医でありながら甲状腺内科の専門医資格を取得することもできました。隈病院では外科と内科の境界線がなく、幅広く学ぶことが出来るからです。外来で患者さんを診ていても、内科的な疾患をお持ちの患者さんは少なくありません。そういった際は、1人では解決できないため、気軽に内科の先生方に相談しています。毎週のカンファレンスは外科内科合同で実施するため、自然とどちらの領域の知識も身につく環境です。
先輩医師の指導と病院のサポートによって2本の英語論文を執筆
隈病院は論文の執筆や国内外の学会への出席を積極的に推進しています。論文の書き方は院長をはじめさまざまな先生が指導してくれますし、学会の旅費は病院から支給されます。
私は入職してから英語の論文を2本書きました。英語は不慣れなため、最初は自分なりに地道に書き進め、院長にアドバイスをいただきながら修正を繰り返しました。普段の臨床も実施しながらの論文作成は、正直とても大変でした。しかし、先生方のご協力と病院のサポートのもと、無事に最後まで書き上げることができました。
甲状腺外科内科の専門医の取得のためには手術症例だけではなく、研究業績や試験合格も必要となります。普段の臨床だけでなく研究も行うことで知識が整理され、自然と専門医を取得することができました。
最近では英語論文や国際学会での発表などの業績を評価していただき、日本外科学会や日本甲状腺学会などから発表依頼をいただくようになりました。
今後も甲状腺一筋で医師の仕事を
私は隈病院で働きながら、結婚・出産を経験しています。周囲のスタッフの協力のもと、産休と育休、時短勤務制度を取得しながら働くことができました。
私は、今後も甲状腺一筋で医師の仕事を続けていくつもりです。現在は院長の出身地でもある愛媛県の松山市を拠点に甲状腺専門外来を行っています。外来で患者さんを診ながら、甲状腺疾患の啓発活動をすることなども視野に入れています。
私は国内でも極めて珍しい女性甲状腺専門医だと思います。甲状腺の病気を持つ患者さんのお気持ちが分かる医師として診察を続けていきたいという強い思いがあります。これからも隈病院で取得した資格やスキルを活かしながら、少しでも多くの甲状腺疾患の患者さんのお役に立てればと思っています。
このインタビューのドクター
愛媛大学医学部を卒業後、愛媛大学病院や済生会今治病院で一般外科の研修を受ける。過去に甲状腺の手術を受けた経験から「同じ疾患の患者さんを助けたい」と甲状腺の道へ。甲状腺専門病院を経て隈病院へ入職。入職後に出産を経験し、産休と育休、時短勤務制度を取得しながら外科医として手術の経験を積む。また、研究にも注力。英語論文や国際学会での発表などの業績が評価され、各種学会から発表依頼も。隈病院入職後の2年間で執刀した症例数は約200例。2018年12月隈病院を退職。
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