インタビュー

外科医が成長できる環境を築くことが使命-隈病院外科科長として

宮内昭先生の一番弟子として

私は香川医科大学(現在の香川大学医学部)を卒業後、消化器外科医を志して同大学の第二外科に入局しました。そんな私が甲状腺を専門とするようになったのは、現在、隈病院の院長を務める宮内昭先生がきっかけでした。

当時、宮内先生は香川医科大学第二外科の助教授を務めていらっしゃいました。宮内先生直々に、乳腺・甲状腺を専門とするグループにお誘いいただき、先生のもとで甲状腺の診療や手術に従事することを決めました。宮内先生の熱心なご指導のおかげで甲状腺外科にやりがいを感じ、甲状腺を専門とするようになったのです。このように、香川医科大学から隈病院を通して宮内先生に師事してきました。名実ともに私は、宮内先生の一番弟子だと思っています。

ご指導いただき1年半程が経過した頃、宮内先生が香川医科大学から隈病院副院長として栄転されました。その後、宮内先生は院長に就任され、医局で引き続き甲状腺外科に従事していた私に「隈病院に来ないか」とお声がけくださったのです。「恩師であり尊敬する宮内先生のお誘いなら」という気持ちで、隈病院にやって来ました。

予想をはるかに超える隈病院のレベルの高さに驚く

実は入職するまで、隈病院のことをそこまで詳しく知りませんでした。もちろん、名高い甲状腺専門病院であることは知っていたので、漠然と「症例数が多く手術のレベルが高い病院なのだろう」というイメージを持っていました。しかし、実際に入職してみると、それまで経験したことがないような豊富な症例や、私の予想をはるかに凌駕する診療や手術のレベルの高さに驚いたことを覚えています。

もちろん、大学で指導を受けているときに宮内先生の手術を見ていたので、その技術の高さは知っていました。筋肉や血管、神経機能を温存させながら行われる出血量が少ない綺麗な手術に驚いたものです。そんな宮内先生の指導のもと、隈病院では、すべての外科医が、可能な限り安全でスピードが早く、確実な手術を実施できるような体制が築かれていたのです。

また、手術だけではなく、皆で知識や技術を高める環境があることも印象的でした。たとえば、週に3回行われるカンファレンスでは白熱した議論が展開されます。このような機会がなければ、自分が経験したことがないような症例や、内科が担当する病気について学ぶことはなかったかもしれません。隈病院で、新たな知識や治療における考え方を学ぶ機会を持てたことは、これ以上ない財産といえるでしょう。

すべての外科医が安全な手術をできるように

自身は現在、隈病院の外科科長として、外科医を統括する立場にあります。外科科長としては、宮内先生が我々にして下さってきたように、できる限り安全な手術をすべての外科医が行うことができるよう教育することが大事な使命であると思っています。

そのため、経験の浅い若手医師でも安全で丁寧な手術を行うことができる体制作りに常に気を配ってきました。たとえば、若手医師の手術時には、ベテランの外科医が基本的には必ず入ります。また、医師の技量や熱意をきちんと理解し、それぞれのレベルに合わせて症例を割り振るようにしています。そのようにして経験を積んでもらいながら、徐々に難しい症例の手術を任せることもあります。

隈病院では若手医師の成長スピードがとにかく速い

当院の若手医師は、内科だけではなく外科も、とにかく成長スピードが速い点が特徴です。教育体制はもちろんですが、豊富な症例も影響していると思います。外科医は実際に数多くの手術を行うことこそが腕を磨くことにつながります。当院では、若手医師でも年間200例程度の手術を担当し、外科医としての技量を磨くには素晴らしい環境といえるでしょう。

隈病院の外科では、甲状腺の手術の経験が少ない若手医師には、入職後3か月間は、助手としてベテラン医師の手術を見てもらうようにしています。手術のさまざまなポイントを理解してもらうことが狙いです。そのうえで、4か月目からは、毎週4〜5例程の手術を実際に担当してもらいます。1年間ここで経験を積めば、かなりの技量を身につけることができるでしょう。もちろん、本人の努力や熱意にもよりますが、2年間隈病院で手術に従事していれば、どこの病院でもリードしていけるような甲状腺外科医に成長できると思います。

実際に、当院で経験を積み、大きく成長してくれた外科医も少なくありません。入職したばかりのときには糸結びなど、基本的な手術手技の修練中であった若手の先生が、約2年間手術の経験を積み、研鑽に励んだ結果、どこの病院でも通用するような甲状腺外科医に成長してくれました。現在では難しい症例であっても、信頼して任せることができる程です。このように後進の先生が、入職当時とは比べものにならないくらい大きく成長してくれることは、外科科長としての大きな喜びでもあります。

外科科長として教育体制をさらに充実させていきたい

恩師である宮内先生を追いかけて、隈病院に来て、本当によかったと思っています。ここで働き、甲状腺の面白さをさらに実感するようになりました。甲状腺は、大腸や胃、肝臓などと比べると非常に小さい臓器です。しかし、小さな臓器にも関わらず奥が深い点が特徴であると思います。さまざまなはたらきを持っていますし、まだ解明されていない病気も少なくありません。興味が尽きず、それがやりがいにつながっています。

隈病院では外科医として手術に従事することはもちろんですが、臨床研究にも取り組むことができます。隈病院における豊富な症例をもとにした研究は、甲状腺医療の進歩や世界中のガイドラインに大きな影響を与えてきました。

また、今後は“甲状腺を専門とする医師を養成する病院”としてさらに良い教育体制を築いていきたいと考えています。甲状腺を学びたい医師が、短期間であっても隈病院で成長できる環境をより充実させていくことも目標のひとつです。これからも、日本、さらには世界中の甲状腺医療のレベル向上にも貢献していきたいと思っています。

このインタビューのドクター

外科

外科 科長
木原 実医師

香川医科大学医学部を卒業後、同大学の第二外科に入局。乳腺・甲状腺を専門とするグループで、甲状腺疾患の診療や手術に従事する。その後、宮内昭院長の誘いで隈病院へ入職。臨床研究とともに、数多くの手術に従事し、甲状腺外科医としての研鑽を積む。また、外科科長として、若手医師の教育にも尽力。すべての外科医が、可能な限り安全で丁寧な手術を行うことができるよう、外科の体制づくりに力を注いでいる。

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