インタビュー

日が経つごとに手術手技の上達を実感できる環境

愛知医科大学から初の医局派遣で隈病院へ入職

私は2010年3月に愛知医科大学(以下、愛知医大)を卒業し、同年4月に社会保険中央総合病院(現:東京山手メディカルセンター)にて2年間の初期研修を受けました。ちょうどそのとき学生時代に親しかった外科医の影響を受けて外科の道に進むことを決め、初期研修修了後の2012年4月、母校である愛知医大 乳腺・内分泌外科に入局しました。
入局後は大学内で他分野の外科を経験し、外科専門医(日本外科学会認定)の資格を取得しました。また、大学院にも進学し、2019年3月大学院を卒業し医学博士号を取得しました。
2018年秋、学位取得の目処が立った時点で国内留学をすすめられました。愛知医大 乳腺・内分泌外科は乳腺も甲状腺も分け隔てなく診療することが求められる環境で、既に乳腺分野では専門医も取得していました。教授からは「外で学んでくるのは乳腺と甲状腺のどちらがよいか」と問われました。
甲状腺疾患は、大学内だけでは経験できる症例数が限られるうえ、手術の方法は施設によって千差万別です。そのため、甲状腺専門病院に行って手術を中心に甲状腺全般の勉強がしてみたいという思いが元々ありました。
そこで私は教授に「甲状腺です」と答えました。修行するのであれば相応の知識があった方が絶対によいと考え、内分泌外科専門医を取得したのち、2019年11月に医局派遣の形で隈病院に入職しました。愛知医大から隈病院へ派遣された医局員は私が初めてです。
 
当時、私の中で隈病院といえば、内分泌外科学会での印象が強かったかもしれません。演題発表などの場で隈病院の先生方とご一緒させていただく機会は幾度かありましたし、何より隈病院による発表数の多さと質の高さにはいつも圧倒されていました。隈病院の発表を見るたび、「非常に質の高い臨床と研究を行っている隈病院に一度行ってみたい」と思っていたことを今でも覚えています。
 

隈病院での学びの日々と驚き

効率的なシステムにより医師が診療に集中できる

実際に勤め始めて驚いたのは、医師が診療に集中できるよう、全てにおいて効率的な体制が整っていることです。
たとえば、カルテに診療情報を書くと、その情報が臨床研究にも使えるような形でまとめられるようにシステム化されています。医師は1人でも多くの患者さんを診療することに専念でき、なおかつ効率的にデータを集めることができます。これによって日々の診療が妥当であるか後日検証できますし、いまだに分かっていない病気のことを解明する手がかりとすることができます。
そのように我々医師が日々の診療に集中できるのも、医師以外の優秀な医療・事務スタッフが強力にサポートしてくれているおかげです。
また、そのような環境は、隈病院が世界に情報を発信する大きな原動力になっていると強く感じています。

教育熱心な先輩指導医のもとで着実に学べる

隈病院は普段から、分からないことがあれば外科・内科を問わず、すみやかに先輩医師に聞きに行ける環境があります。教育熱心な先生方が多いため、些細な質問であってもすぐに教えていただけます。時には自分が質問した以上の知識を教えていただけることもあるほどです。
 
手術手技の指導面では、一つひとつの手技を丁寧に教えるスタイルの先生もいれば、難しい部分以外は本人に考えさせ、挑戦させながらも万全のバックアップで安全を確保してくれるスタイルの先生もいます。
隈病院の場合は定期的に術者と助手が入れ替わるので、どちらのスタイルの指導も受けることができます。そのため、細かい部分まで教えてもらいたいタイプの医師と、できる限り自分で考え実践しながら上手くなりたいタイプの医師の両方に対応した教育体制が整っています。工夫次第では、前者の教え方をする先生のもとで得た知識を活用し、後者の教え方をする先生のもとで実践することも可能です。
また、最近は執刀医を経験させていただく機会が増えましたが、自分が執刀医を担当する場合は先輩医師が助手に入ってくださるので、非常に心強いです。

病理医から直接細胞診を学べる機会も

外科医でも細胞診を勉強する機会が設けられているため、手術手技だけではなく、診断に必要なスキルも併せて習得できます。具体的には、標本の作り方に対するアドバイスや、作成した標本へのフィードバックなどを、病理医の先生方から直接学びます。
一般的に外科医が病理医から直接細胞診のノウハウを学ぶことは少ないので、貴重な学習環境だと思います。
 

甲状腺外科医としてのモチベーション――手技上達の実感と難治例への挑戦

豊富な手術経験と充実した指導体制のもと、2019年11月に入職してから2020年10月現在までの約1年間で、自分の手術は少しずつ、けれど確実に上手くなってきていると自覚しています。
私の場合、入職後3か月間は助手を専任で務め、4か月目から執刀を始めました。今まで習ってきた手術方法と隈病院の手術方法では異なる点もあり、最初、手術時間は短いとは言えなかったと思います。
しかしこの1年間にわたり、先輩医師さまざまな指導を受けながら多くの症例数を経験できたおかげで、日が経つごとに手術の所要時間も短くなってきています。もちろん、所要時間が全てではありませんが、手技の上達を実感できることは、外科医として大きなやりがいです。
さらに最近では、指導医から難しい症例にもチャレンジさせていただけるようになりました。このことも、“もっと自分の手技を磨ける”というモチベーションになっています。

甲状腺がん診療の課題、難しさ

甲状腺がんは“手術して終わり”ではありません。手術をしてからも長く付き合っていく病気であるため、術後の患者さんをしっかりとフォローアップすることが非常に大切になります。
また、甲状腺がんにおいては、手術後に再発した場合の治療も課題とされます。再発した場所によっては再手術で腫瘍(しゅよう)を摘出しますが、手術をせず別の治療法を取るほうがよいケースもあるので、治療方針については都度慎重に考えなければなりません。
個々の患者さんの併存疾患やバックグラウンドを考えたとき、再発治療を開始するべきタイミングは一人ひとり異なります。その適切なタイミングについてはいまだに議論がなされている状況です。
大学に戻ってからも引き続き甲状腺がんの患者さんを診ていきたいと考えています。隈病院にいる期間内で多くの経験を積み重ね、より高度な甲状腺がんの術後のフォローアップ方法や再発治療のノウハウについても、さらに学んでいきたいです。

自分と同じ内分泌外科分野の担い手を増やすために

日本の外科医、特に内分泌外科医の志望者数は、過去に比べて少なくなってきています。内分泌外科医の減少に歯止めをかけるためにも、これからはよりいっそう、内分泌外科分野に人材を引き入れなければなりません。そして、医学生や研修医に対して内分泌外科分野の面白さを伝え、この分野に引き入れるのは、本来私のような医局に属する医師が担うべき仕事です。
隈病院には2021年9月まで在籍させていただく予定ですので、それまでに隈病院で学んだことと得たものをしっかりと大学に持ち帰り、医局にフィードバックしたいと思っています。
 
隈病院のような環境で学べるチャンスは非常に貴重です。だからこそ大学に戻った際は、学生や研修医に甲状腺診療の面白さを伝え、この分野を学びたいと思った後輩医師にも隈病院に国内留学をして、私と同じ経験をしてもらいたいと思っています。

このインタビューのドクター

2010年、愛知医科大学医学部卒。初期研修修了後、同大学乳腺・内分泌外科講座に入局し、乳腺・内分泌外科の臨床および研究に携わる。2018年、国内留学をすすめられたタイミングで甲状腺を専門的に学ぶことを決意し、2019年11月に隈病院に入職。2020年現在、甲状腺がんのスペシャリストを目指し、難治例も含めて日々積極的に診療および手術に取り組んでいる。

この記事をシェアする