インタビュー

隈病院で自分自身が治療を受けた経験から入職。憧れの先輩方と働ける喜び

滋賀医科大学から初の、医局派遣という形で隈病院へ

私は滋賀医科大学を卒業後、同大学の内科学講座 糖尿病内分泌・腎臓内科教室に入局しました。もともとの専門は糖尿病で、9年目までは主に糖尿病の診療に携わっていました。一般社団法人日本糖尿病学会認定の糖尿病専門医も取得しています。そして、研修医の頃から憧れ続けた隈病院へ、ちょうど10年目に医局派遣という形で入職しました。
滋賀医科大学から隈病院へ内科系の医師が派遣された例は、ほとんどないと聞いていますので、後で述べますが、送り出してくださった滋賀医大の講師の先生には感謝しております。
隈病院に入職する前にも、外来で甲状腺疾患の患者さんを診ることはありましたが、現在のように毎日何十人も甲状腺疾患ばかりを診ることはありませんでした。貴重な経験をさせてもらっていると感じる毎日です。

入職を希望したのは隈病院で治療を受けたことがきっかけ

最初に隈病院に入職したいと思ったのは、医学生の頃です。学生同士で診察の練習をしている時に、ペアを組んでいた学生から「首が腫れている」と伝えられました。自分ではまったく気付かなかったのですが、よく見たら確かに腫れていて、診察を受けると甲状腺に結節があることが分かりました。
医師である私の父が病理診断科の廣川 満良(ひろかわ みつよし)先生と知り合いだった縁もあり、廣川先生に細胞診をしていただきました。その結果、甲状腺に乳頭がんがあることが分かり、そのまま隈病院で手術を受けました。甲状腺にもともと興味はあったのですが、この経験をきっかけに、将来は甲状腺疾患に関わる仕事をしたいと思うようになったのです。
この頃から隈病院に入職したかったのですが、医師はキャリア5年目以降しか受け入れていなかったので、ほかの病院で研鑽を積んだり、医局で後輩の指導をしたりしながらチャンスを待っていました。ちょうど10年目に医局から隈病院に派遣していただけるという話になり、講師の先生が内科科長である伊藤 充(いとう みつる)先生に連絡してくださいました。伊藤先生から「1回見学に来てください」という形でお返事をいただいて、その見学を経て入職が決まりました。

憧れていた先生たちと同じ場所で働けることに感動

甲状腺を専門にしていない周囲の医師たちの中には、隈病院に内科診療のイメージを持っていない方もいました。外科のイメージが強かったのだと思います。ですが、私自身は甲状腺の学会誌などにも目を通しており、隈病院の内科の先生たちの名前や実績についてもある程度知っていました。たとえば、西原 永潤(にしはら えいじゅん)先生や伊藤 充先生などは学会誌に頻繁に掲載されていたので、私にとっては有名人というか芸能人みたいな感じの存在でした。だから見学に来た時には、「あの先生たちと同じ場所にいる」と思って感動したことを覚えています。
入職後は、憧れていた先生たちから直接指導を受けられることにとても感謝しています。先輩医師たちとの垣根が非常に低いので、気軽に「こんな症例がありますが、どう思いますか」という感じで質問しても、いつも丁寧に教えてくださいます。教育に対する熱意があり、教えてあげようという姿勢が伝わってきますし、本当にありがたいですね。ここは、教育病院としてもおすすめできる場所だと思います。難しい症例だったり、経験のない治療に携わったりするときでも、先輩医師をはじめ周囲の方たちがサポートしてくださるので安心ですし、本当に助かっています。
また、医師だけではなく、看護師や事務スタッフなども積極的に勉強していることには驚きました。コメディカルのスタッフが勉強会に出席していたり、医師向けの甲状腺の本を読んでいたりする姿を見て、勉強熱心なスタッフがそろっていると感じます。

甲状腺診療に携わるなかで感じるやりがい

甲状腺疾患の中には、甲状腺機能低下症のように全身に症状が現れるものがあります。特徴的な症状がないなかで、甲状腺の病気を疑って診断をつけていくことに大きなやりがいを感じています。
また、バセドウ病など若い女性に多い病気も甲状腺疾患に含まれるので、不妊治療を受けている患者さんの治療に携わることもあります。クリニックで不妊治療のスクリーニング検査を行った結果、ホルモンの異常値が出たために紹介される例も少なくありません。診察後に薬で治療して、その後妊娠にいたる方がいると、未来につながる仕事ができたかなと思って感動します。やりがいがあるし、この仕事をしていてよかったなと思う瞬間です。
また、お話ししたように私自身、患者として乳頭がんの治療を経験しています。患者さんにがんの診断がついて手術を受ける必要が出てきたときに、「自分も同じ病気をしました」と伝え、自身の体験をお話しすることで、患者さんが少し安心されることもあります。このように、医師としての経験だけではなく患者として自身の経験が生かせた時にも、甲状腺疾患の診療に携わっていてよかったと感じます。

2年間の経験を通して甲状腺の面白さを伝えていきたい

この2年間で臨床の能力を上げることはもちろんですが、できれば国際的なジャーナルに掲載されるような論文を執筆したいと思っています。すでに挑戦していて、Letterという形ではありましたし、また有名雑誌ではありませんが、先日accept(採用)されました。論文を執筆するのは初めてでしたが、先輩方にサポートしていただきながら書き上げることができ、非常によい経験になったと思っています。
もともと、甲状腺の分野は研究され尽くした分野だと思っていました。それこそ学生時代には先輩方から「甲状腺の分野では新しいことはもう見つからない」という意見をいただいたこともあります。しかし、入職後にカンファレンスに出席すると活発に議論されていて、いい意味で裏切られました。甲状腺はまだまだ研究課題があって発展の余地がある分野なのだと思います。これからも、憧れの先輩方に近づけるよう診療に研究に尽力していくつもりです。

このインタビューのドクター

滋賀医科大学医学生の頃、隈病院で甲状腺疾患の治療を受けた経験から将来は隈病院で甲状腺疾患の診療に携わりたいと考える。大学を卒業後、同大や東近江総合医療センターにて糖尿病や内分泌代謝疾患の診療に携わり医師としてのキャリアを積んだのち、2021年より隈病院 内科に入職。学生時代から憧れていた先輩医師の指導を受けながら、研究・診療に日々尽力。2023年3月隈病院を退職。

この記事をシェアする

  • TOP
  • インタビュー
  • 隈病院で自分自身が治療を受けた経験から入職。憧れの先輩方と働ける喜び