インタビュー

理論的に手術手技を学べる環境下で、困ったときに頼りになる甲状腺外科医を目指す

甲状腺疾患をさらに学びたいという思いで隈病院へ

出身大学の附属病院で2年間の研修を受けた後、乳腺甲状腺外科に入局しました。乳腺甲状腺外科を選んだ一番の理由は、研修期間中にいろいろな診療科を回るうちに、乳腺と甲状腺の病気には女性の患者さんが多いことを実感し、女性の診療により力を入れたいと思うようになったことが大きかったと思います。
入局した当時、乳腺甲状腺外科はその患者さんの大部分が乳腺疾患であり、乳腺疾患を中心に診療していました。しかし、乳腺と甲状腺両方の手術を経験するなかで、繊細な手術を必要とする甲状腺に興味を持つようになりました。そのため、自身のキャリアの中で、一度は甲状腺の診療に集中する期間を作りたいと考えるようになりました。
そのような思いを抱えながら、2019年まで大学で臨床助教として勤めた後、医局の派遣医師として隈病院に入職する機会をいただきました。1年間だけでしたが、非常に学ぶことの多い充実した時間を過ごさせていただきました。その後は隈病院を一度離れることになったのですが、派遣医師として勤務していた当時、隈病院での働き方が肌に合っていると感じていたことや、先輩の先生方が「戻ってこないか」と声をかけてくださったことも契機になり、2022年4月より再び隈病院に赴任しました。

的確な助言をくれる先輩医師たち

2019年に最初に入職する以前は、甲状腺疾患を診る病院の中でも、特に“甲状腺といえば隈病院”というイメージがあって働くことにハードルの高さを感じていました。自分の知識や技術が、隈病院のレベルに追いつけるだろうかという不安があったのですが、大学の先輩であり当時隈病院に勤めていた医師から「あらゆる場面で先輩医師から指導を受けることができるから安心だよ」と聞いたことで背中を押され、大学で執刀の経験を積んできたのだから基本的な部分は大丈夫だろうと思えるようになり、飛び込むことができました。
そして、結果的にはこの最初の1年間で、数多くの手術だけでなく、論文執筆、学会発表まで経験することができました。忙しいなかでも先輩医師の方々が、親身になって指導してくださったこと、困っているときには的確な助言をくださったことは特に印象に残っています。患者さんの検査結果の画像を一緒に見ながら、よくアドバイスをいただきましたし、時には食事に出た際に、診療において悩んでいることを聞いていただくこともありました。
また隈病院には、私のように甲状腺の診療により深く携わり、専門性をより一層高めたいという思いで入職する医師が多くいます。ハードルが高いと感じていた入職前とは大きく印象が変わり、実際にはしっかりと指導してもらえる体制が整っているので、着実に経験を積み重ねられると感じるようになりました。2022年に、再び隈病院に戻って来たのも、このような素晴らしい環境があったからにほかなりません。

隈病院で経験した新しい考え方、働き方

診療科間の垣根の低さと全体カンファレンス

他病院とは大きく異なる、隈病院ならではと感じている特徴の一つは、毎週開かれるカンファレンスに、診療科や職種に関わらず多くの部署からスタッフが参加していることです。特に、カンファレンスで診療科の異なる内科や病理診断科の先生方の意見を聞ける機会は非常に貴重なものですが、隈病院では他科の医師との意見交換も日常的に行われていて、入職したばかりのころはとても新鮮に感じられました。このように、スタッフ同士の距離が近いからこそ何でも相談しやすい環境が整っています。

理論的に手術手技を学べるハイレベルな環境

甲状腺手術の経験豊富な外科の先生方が多く集い、先輩医師から教えを乞う機会に恵まれている隈病院ですが、なかでも名誉院長の宮内 昭(みやうち あきら)先生が直接指導をしてくださることがあります。宮内先生は、手術の順番や1つ1つのテクニックなどを理論的に教えてくださり、今までの自分の考えが根本的に変わるような手術の方法も学ぶことができました。こうした環境に身を置いてきたことを、2019年から1年間勤めたときの経験も含めて振り返ってみて、私自身、確実に技術が向上していると実感しています。
宮内先生のみならず、指導医の先生の手術はやはりレベルが高いと感じますし、研究に関しても筆が速くて国内外を問わず論文発表を積極的に行われている先生や、外来診察で驚くほど多くの患者さんを受け持っている先生などがいらっしゃいます。同じ甲状腺疾患の診療に携わる医師の中でもそれぞれに得意とされている分野がありますが、私も幅広いスキルを取り入れながら、総合的な診療能力を有した外科医として貢献していきたいと考えています。

忙しいなかでもワーク・ライフ・バランスを実現できる

隈病院は、多くの外来診療・手術治療を抱えている一方で、忙しいなかでもワーク・ライフ・バランスを実現しやすい職場です。たとえば、一部のカンファレンスが早朝に行われることで、業務終了時刻後の残業時間を減らすことができています。それに加えて、当直は基本的に希望制で、ご家庭の事情がある方などは考慮してもらえますし、救急対応が必要になることが比較的少ないこともあって、私はあまり苦に感じません。また、可能な限り必要な業務を時間内に終わらせ業務時間終了後にはすぐに帰宅するという考え方が、病院の全スタッフに浸透しているおかげで、自分自身で仕事のオン・オフの管理を行うことができています。

技量が問われるからこそ感じる甲状腺手術のやりがい

私が甲状腺手術を行うなかで特にやりがいを感じているのは、繊細な技術が必要なところです。甲状腺手術は、重要な神経が近くにあるので傷つけないよう細心の注意を払って臨む必要があり、医師の技量が問われる治療の1つです。隈病院は、年間1,602件*の手術数実績を有していて、多くの執刀経験を積むことができます。さらに、難易度の高い治療方法であっても、先輩医師に教わりながら感覚を掴むことができる素晴らしい環境だと思っています。
*2021年の年間データ

困ったときに頼りにしてもらえる医師でありたい

今後は引き続き甲状腺疾患全般に携わりながら、女性医師としても頼られる存在になりたいと思っています。甲状腺疾患や乳腺疾患の患者さんは女性医師の診察を希望されることもあり、診察時に「女性の先生だと話しやすい」と言っていただけると、いつも嬉しく思います。
また、私は、日本内分泌外科学会内分泌外科専門医、日本乳癌学会乳腺専門医などの専門医資格を取得していますが、今後もその他の専門医の取得を目指しているところです。後輩となる先生が入ってこられたときにも頼りにしてもらえる医師になれるよう、これからも努力していきます。

このインタビューのドクター

川崎医科大学医学部を卒業後、女性の患者さんの診療により携わりたいという思いで乳腺甲状腺外科に入局。大学病院で乳腺・甲状腺の診療経験を積むなかで甲状腺に強い関心を抱き、2019年に隈病院 外科に入職し、甲状腺外科医としてのキャリアをスタートさせる。2020年に大学に戻り臨床助教として研鑽を積んだ後、2022年より再び隈病院 外科に赴任。女性医師としても頼られる存在になることを目指し、日々患者さんと向き合う。

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