インタビュー

安住よりも研鑽の道を選んだ

糖尿病とともに甲状腺の診療にも携わっていくために

私は筑波大学を卒業後、大学の附属病院に6年間勤め、大学院で糖脂質代謝に関する基礎研究に従事しました。その後、東京都内の市中病院を経て、糖尿病と甲状腺疾患、睡眠時無呼吸症候群を主に扱う神奈川県内のクリニックグループに入職しました。

そのクリニックグループへの入職を選んだのは、糖尿病の専門医を取得する中で、臨床家として糖尿病の外来診療を極めていきたいという思いがあったからです。同時に「甲状腺の診療にも長期的に携わっていきたい」と考えていました。甲状腺の診療は、医師の知識や技術が患者さんの病状の改善に直接影響します。そのように内科医の腕が試される部分に魅力を感じていたのです。糖尿病だけでなく甲状腺疾患を数多く扱っていたことも、クリニックグループへの入職を決意した理由のひとつでした。

安住ではなく研鑽の道を選んだ理由

最終的に、私はそのクリニックグループ内の一診療所の院長まで務めさせていただきました。そのまま院長として勤務を続ける道もありましたが、「甲状腺疾患の診療についてさらにレベルを上げたい」という気持ちは徐々に強くなっていきました。

その頃、ちょうど隈病院で研修を受けられるということを知ります。隈病院は世界的にみても甲状腺診療のレベルが高い病院として名前を知っていました。ウェブサイトを確認すると、多くの先生が隈病院で研修をされていることが分かりました。その情報に背中を押されるように、隈病院で研修をしたいと応募し入職が決まったのです。

私のように、10年以上のキャリアを積んだ医師が研修を積むというのは珍しい例かもしれません。私自身、「本来ならば後進の指導にあたっていなければいけない時期なのではないか」という思いもありましたが、臨床医として甲状腺診療を突き詰めていきたい気持ちが強く、診療レベル向上のため研鑽の道を選んだのです。

ストレスなく働ける充実した環境

実際に働いてみると、IT化によって診療システムが整備されており、非常に働きやすい病院であると感じます。入職時の面接の後、先輩医師が「隈病院ではストレスなく診療をすることができる」と教えてくれました。その言葉通り、受付から検査、診察に入るまでの一連の流れは非常にスムーズで、洗練されています。

また、医師のみならず看護師や臨床検査技師、受付スタッフなど、すべての職員の方の実務能力が非常に高いことには驚きました。これらも、診療をスムーズに行うことができる理由のひとつであると思います。

レベルの高いカンファレンスから学ぶ日々

入職後最初の3か月は新規の患者さんをメインで担当し、その後は主にかかりつけの患者さんを担当しています。指導体制については非常に満足していますし、感謝しています。外来診療中の些細な疑問でも、すぐに教わることができる体制です。特に甲状腺診療の第一人者の先生方がすぐそばにいて直接教わることができる環境は、非常にありがたいと思っています。

また、先輩医師に「カンファレンスを見ていれば、徐々に甲状腺疾患についてわかってくる」と教えられたのですが、まさにその通りでした。週に1回、内科で行われるカンファレンスでは、新任の医師のカルテをベテランの先生方に確認してもらい、診断や治療についてアドバイスをもらうことができます。

診療科の隔たりなく行われる全体カンファレンスは、甲状腺疾患に関するさまざまな知識や診療技術を学べる場所であり、初歩的な症例提示であっても意見をもらえるので、頭の下がる思いです。ベテランの先生方がカンファレンスで提示する症例は非常にレベルが高く、勉強になります。他にも、術前のカンファレンスでは、外科の先生方が翌週の手術の症例提示を行います。それを見ることで、どういう症例を外科にまわせばいいのか、ある程度理解できるようになってきました。

甲状腺の診療レベル向上を目指して

私は2年間の研修で、ひととおりの甲状腺疾患を経験し、診療の知識や技術を向上させることを目標にしています。もちろん、甲状腺専門医の取得も目指しています。また、臨床研究にも取り組んでおり、Marine-Lenhart症候群という疾患概念に混乱を生じている病態についての論文を執筆中です。

将来的には、もともとの専門である糖尿病や睡眠障害などの生活習慣病の診療にも取り組みながら、甲状腺の診療にも注力していきたいと考えています。また、診療とともに情報発信や後進の指導、コメディカルの指導にも取り組んでいきたいです。

臨床医としての腕を磨き、「社会に貢献したい」という気持ちが私の原動力です。そのために、まずは2年間、隈病院で研鑽を積み、甲状腺の診療レベルを向上させていきます。

このインタビューのドクター

筑波大学を卒業後、大学の附属病院に6年間勤務し、大学院で糖脂質代謝に関する基礎研究に従事。その後、東京都内の市中病院を経て、糖尿病と甲状腺疾患、睡眠時無呼吸症候群を主に扱う神奈川県内のクリニックグループへ入職する。クリニックの院長を経て、甲状腺の診療レベルの向上を目指し、隈病院へ入職。もともとの専門である糖尿病や睡眠障害などの生活習慣病とともに、甲状腺の診療を専門とすることを目標として取り組む。2019年12月隈病院を退職。

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