「甲状腺専門病院で経験を積みたい」という思いを実現

私は筑波大学を卒業後、東京にある総合病院で内科研修を行い、そのまま同じ病院の内分泌代謝内科に入りました。内分泌代謝内科では、糖尿病や甲状腺疾患を中心として内分泌代謝領域の疾患を広く担当していましたが、甲状腺疾患の奥深さに触れ、「いつか甲状腺専門病院で経験を積みたい」と思うようになりました。

日本にあるいくつかの甲状腺専門病院の情報収集をしてみると、隈病院のウェブサイトでオープンに医師を募集していることを知り、実際に見学をさせていただくと、甲状腺を専門に勉強したい医師を歓迎する雰囲気を強く感じました。「よりハイレベルな環境で甲状腺を学びたい」と思っていた私は入職を決意。自ら応募し、晴れて入職が決まりました。

「学びたい」という意欲に応えてくれる文化がある

日本有数の専門病院で働くにあたり、ハイレベルな環境についていけるのか、自分がこれまでやってきたことが通用するのか、少なからず不安を抱いていました。また、働く環境を変えることも初めてであったため「新しい環境に自分がなじめるのだろうか」という思いもあったのです。

しかし、実際に入職してみると、これらの不安はなくなりました。新たな入職者に対してみな非常に優しく、親切に指導してくださる環境があったからです。先輩の先生たちは、どんな質問に対しても真摯に答えてくださり、「学びたい」という意欲に積極的に応えてくれる隈病院の文化に感謝しています。

甲状腺専門病院の医師として研鑽を積む

入職してからの1年間は、常勤として勤務しながら経験を積ませていただいてきました。週に4日は隈病院で甲状腺漬けの日々を送り、週に1日は糖尿病専門クリニックに勤務。そのおかげで、継続して糖尿病の診療経験も積むことができ、糖尿病専門医を維持することができています。

隈病院で診療を開始した当初は分からないことが非常に多く、積極的に質問してさまざまな先生にご意見をいただきながら、教科書や論文を読み漁る日々を過ごしました。たとえ新任の医師であっても、患者さんにとっては、私も「甲状腺専門病院の医師」の一人です。その期待に応えるために自ら学び、積極的に自己研鑽を積むことを心がけました。それはプレッシャーでもありましたが、そのおかげで成長できたと思っています。

とことん追求する姿勢が徹底されている

隈病院では、わからないことに対して、とことん追求する姿勢が徹底されています。たとえば、原因が解明されていない症例だとしても、そのまま放っておかず、探求し続ける姿勢が求められます。

また、入職後に驚いたことは、カンファレンスのレベルの高さです。カンファレンスの議題にあがる症例は、稀有であったり、複雑で判断に迷うものばかり。毎週のカンファレンスはまるでミニ学会です。論文を多数執筆され、学会のシンポジストや論文査読者を務めるような、その分野の一流の先生方が大勢在籍しているので、カンファレンスに参加しているだけで、毎回「このような見方や考え方をするのか」と非常に勉強になります。

チャンスを与えてもらえる恵まれた環境

隈病院は、チャンスを与えてくれる場所でもあります。私も入職後、すぐに講演会で演者を務めたり、甲状腺学会で発表したりする機会をいただきました。現在は、隈病院が保有する豊富なデータを基にして、慢性甲状腺炎（橋本病）関連の英語論文を投稿中で、その他、医学書籍の原稿執筆も一部担当しています。望んで努力すれば、海外の学会で発表することや、有名雑誌に掲載されうる論文を書くこともできます。やりたいことや勉強したいことがあれば、その要求にとことん応えてくれる体制がこの病院には整っています。

私が考える甲状腺内科診療の面白みのひとつは、薬の匙加減が病気のコントロールの良し悪しにつながるような、医師の腕が試される部分が大きいところです。一流の先生方がすぐ隣の診察室で診療をしているような恵まれた環境で、甲状腺内科医としての技量を磨かせていただきました。

また、甲状腺の分野では、甲状腺がん診療に内分泌外科医や耳鼻科医が主に携わることが一般的であるため、内科医は甲状腺がん診療の経験が必然的に少なくなります。一方、隈病院は内科医であっても、甲状腺微小がんの経過観察をはじめとして、甲状腺がん症例を扱うことも多く、がん診療の経験を積むためにも適した環境であると思います。

隈病院との縁を大切に医師として成長していきたい

さまざまな事情があり、1年という短い期間で研修期間を終え、前任地に戻ることになりましたが、隈病院での日々は大変有意義なものであり、私の選択は間違っていなかったと確信を持っています。

今後は、また前任地で、糖尿病や甲状腺疾患を中心として内分泌代謝領域の疾患を広く担当することになります。隈病院で新たに得た甲状腺診療の経験や技術を今後働く場所でも伝えていきたいと思っていますし、それを糧として、患者さんによりよい医療を提供していきたいと思っています。

また、先輩医師を始めとする隈病院で得られた人と人とのつながりは、かけがえのないものだと思っています。今後もこのご縁を大切にしながら、医師として成長していきたいです。